宗教にのめり込む親の下で育った「宗教2世」の子どもたちを助けるため、厚労省は12月27日、宗教の信仰に関わる児童虐待について、児童相談所がどのように対応すべきかをまとめた「Q&A」を作成し、自治体に通知した。学校行事に子どもが参加を希望していながらも、子どもへの適切な養育の確保や教育の機会の確保などを考慮しないまま参加を制限とする行為は心理的虐待またはネグレクトであるとするなど、具体的な事例に踏み込んだ。
政府の「『旧統一教会』問題関係省庁連絡会議」の議論を受けて、厚労省では10月6日付で宗教の信仰のみを理由として消極的な対応を取ることがないようにすることなどを児童相談所に求めていたが、今回の「Q&A」では、さらに宗教の進行に関して児童虐待に該当すると想定される事例や対応する際の留意点などを整理した。
「Q&A」ではまず、基本的な考え方として、保護者の行為の背景に宗教の信仰があったとしても、児童虐待の定義に当てはまるものであれば他の虐待と同様に子どもの安全を確保するための対応をしなければならないと強調。子どもの思想や良心、信教の自由については子どもの権利条約でも尊重すべきことが定められていることや、子どもは必ずしも自由意思の下で宗教を信仰しているとは限らないことを踏まえ、児童虐待に該当するかは、子どもや保護者の状況、生活環境などを照らして総合的に判断する必要があるが、その際は子どもの側に立って判断すべきだとした。
その上で、例えば宗教的行事に参加している中で、話を真面目に聞いていなかったり居眠りをしていたという理由で保護者が子どもをたたいたり、むちで打ったりする行為、長時間にわたり身動きができない状態にしたり、深夜まで宗教活動に参加させたりする行為は身体的虐待に当たるとした。
同様に、「これをしなければ地獄に落ちる」などの言葉で子どもに恐怖心を植え付けたり、他者の前で信仰の宣言を強制させたりすることなどは心理的虐待に該当するとした。
学校教育に関連したものでは、宗教の信仰活動で金銭を使い込んだために、子どもの教育機会の提供に支障が出ている場合、本人が学校行事に参加したいと考えているにもかかわらず、適切な養育の確保や教育機会の確保などを考慮せずに参加を制限する行為、保護者の同意が必要な書類への書名や緊急連絡先の記入の拒否などの方法で、子どもの進学や就職を実質的に制限するようなことなども虐待に当たるとしている。