文科省は12月28日までに、国公立の小中学校および特別支援学校の施設のバリアフリー化に関する実態調査結果を公開した。全国の公立小中学校(2万7733校)のうち、校舎にバリアフリートイレを設けている学校は70.4%、スロープによる段差解消は門から建物の前までが82.2%、昇降口・玄関から教室までは61.1%、エレベーターの設置率は29.0%と、前回2020年度調査時よりはバリアフリー化が進んだものの、同省が定めた25年度末までの整備目標に到達するには厳しい状況であることが明らかになった。
20年5月のバリアフリー法改正により、21年4月以降は公立小中学校で既設であっても、数値目標を示し、バリアフリー化を積極的に進めることが盛り込まれた。これを踏まえ、同省は20年12月に25年度末までの5年間に緊急かつ集中的に整備を行うため整備目標を設定し、公立小中学校などの学校設置者に対し、バリアフリー化の取り組みの加速を要請している。
今回の調査は全国の国公立の小中学校、特別支援学校の設置者を対象に、22年9月1日時点のバリアフリー化の状況や整備計画の策定状況、バリアフリー化の予定などを尋ねた。
調査結果によると、全国の公立小中学校(2万7733校)のうち、校舎にバリアフリートイレを設けている学校は70.4%(前回65.2%)、スロープによる段差解消は門から建物の前までが82.2%(同78.5%)、昇降口・玄関から教室までは61.1%(同57.3%)、エレベーターの設置率は29.0%(同27.1%)だった。いずれの項目も前回22年度の調査時よりは増加していた。
また、屋内運動場にバリアフリートイレを設けている学校は41.9%(前回36.9%)、スロープによる段差解消は門から建物の前までが77.9%(同74.4%)、昇降口・玄関からアリーナまでは62.1%(同57.0%)、エレベーターの設置率は70.5%(同65.9%)だった。
今後のバリアフリー化の計画や方針などがある学校設置者は25.0%で、25年度までの校舎のバリアフリートイレの整備予定は75.6%、スロープによる段差解消の整備予定は、門から建物の前までが84.7%、昇降口・玄関から教室までは66.5%だった。バリアフリートイレについては、「避難所に指定されている全ての学校(92.6%)」に、スロープによる段差解消については「全ての学校」に整備するという目標には届かない状況となっている。さらに、エレベーターは、要配慮児童生徒が在籍する41.1%の学校に整備するという目標に対し、設置予定は34.2%だった。
文科省の大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課の担当者によると、学校施設のバリアフリー化が遅れている自治体にヒアリングしたところ、「大規模改修に合わせてバリアフリー化を検討したいので、今すぐは難しい」「安全対策のための改修を先に進めたいので、バリアフリー化までは手が回らない」「将来的な学校の統廃合の話が進んでおり、既存の校舎のバリアフリー化に取り組みづらい」などの声が上がっていたという。
同担当者は今後の対応について「前回調査よりは進捗(しんちょく)しているものの、25年度の整備目標に向けてはさらに取り組みを強化していく必要がある。学校設置者に対して財政支援をしていくだけでなく、文科省のHPやポスターで、教委だけでなく、各校の教職員や児童生徒にもバリアフリー化の重要性を訴え、取り組みを進めていきたい。また、事例集や相談窓口についても活用を促していく」と述べた。