判断能力の過信は落とし穴 教職員向けにメディアリテラシーの講演会

判断能力の過信は落とし穴 教職員向けにメディアリテラシーの講演会
iStock.com/useng
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 フェイクニュースなどにだまされず、情報を自律的に判断する力が求められている中、学校でのICT利活用を進める埼玉県戸田市教育委員会は1月10日、教職員向けにメディアリテラシーをテーマにした講演会をオンラインで開いた。ニュースアプリを提供するスマートニュースの山脇岳志スマートニュースメディア研究所所長が、これからの時代に求められるメディアリテラシーについて語った。

 同研究所では、開発した教材を用いたメディアリテラシーの教育効果測定を同市教委と共同で実施している。市立小中学校の教職員の指導力向上などを目的に毎年この時期に行われている「戸田市教育フェスティバル」で、今回の講演会を企画した背景について、戸ヶ﨑勤教育長は「フィルターバブルやエコーチェンバーに代表されるように情報交流空間も大きく変容している。ネット上には子どもたちのためにならないと思われるレコメンド情報もあふれている。日々そのような中で子どもたちが接する全ての情報を大人が把握し、コントロールしていくことはもはや不可能であり、子どもたち自身によるデジタルの適切な選択と活用する力や、クリティカルな思考力、判断力が求められている」と説明。メディアリテラシー教育が、こうした自律的にデジタル社会と関わっていくデジタル・シティズンシップを育成するための核になると強調した。

 講演では、記者として長年、朝日新聞社に勤務していた山脇所長が、実際に日本で広まった本当かうそか判断が難しい情報の事例を紹介。例えば、奈良市内の駐車場で複数のシカが寝そべっている様子の写真が載ったSNSへの投稿では、「実はこの情報の真偽について、正解と言えるものはない。おそらく本当だが、投稿者自身に直接確かめたとしても、その人がうそを言うかもしれないし、この程度の合成画像は今や簡単に作れる。虚偽かうそか見抜くのは難しいし、このように本当かどうかをいちいち確かめられない情報も世の中にはたくさんある」と解説。従来の情報モラル教育から、世の中の情報に対して個々人が自律的に判断していくデジタル・シティズンシップに転換していく必要があると呼び掛けた。

 その上で、メディアリテラシーのポイントとして①個人が発信するものも含め、全てのメディア・メッセージは再構成されていると意識する②クリティカル・シンキングの中でも熟慮的・内省的な思考の大切さを自覚する③ソーシャルメディアや検索エンジンなども含めたメディアの仕組みを理解する――ことを挙げ、特に②については「自分の判断能力の過信が落とし穴になる。これは子どもたちだけでなく、常に正解を求められがちな先生もそうだと思う。これがフェイクニュースにだまされたり、事実なのに事実ではないと認識してしまったりすることにつながりやすい。クリティカル・シンキングの中の熟慮的・内省的思考というのは、『自分が間違っているかもしれない』と思うことが実は一番大事で、それがフェイクニュースにだまされないことにもつながるし、立ち止まって考えることにもつながる」とアドバイスした。

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