深刻な教員不足を背景に、東京都教委は1月12日の定例会で、教員採用試験の一部を大学3年生で受験できるようにする、民間企業の内定式より早い時期に合格発表を前倒しするなどの施策を、来年度から講じる方針を明らかにした。合わせて現職の教員、とりわけ新人教員の精神疾患や離職が大きな課題となっていることから、新人教員に特化したメンタルヘルスサポートや、再任用教員による支援を充実させる。こうした応募人員の増加と教員支援体制の充実、外部人材のさらなる活用を同時に進め、教員確保策を一段と強化する。
東京都では今年度、年度当初に欠員が発生するなど教員不足が深刻化。今年度は社会人向け選考で免許取得までに2年間の猶予を設けたり、教員志望者向けに現役教員による相談会を開いたりと、幅広い受験者層の掘り起こしに向けた取り組みを行ってきたが、来年度はそうした方策を一段と本格化させる。
まず応募人員の増加の観点からは、採用試験の一部(第一次選考のうち「教職教養」「専門教養」を検討)を大学3年生で受験できるようにし、不合格だった場合は4年生での再チャレンジも可能とする。また、合格発表を10月中旬から9月中に前倒しするなど、新卒受験者の確保を進めるほか、前出の社会人向け選考の年齢制限を「40歳以上」から「25歳以上」に引き下げる。
さらに途中退職をした都の公立学校教員経験者が10年以内に復帰する時に一次選考を免除する「カムバック採用」を新設するほか、教員免許状を取得したものの他の職に就いた者が再び教職を志望する際、事前に学び直しができる「任用前研修」を実施する。
一方、東京都では毎年、教員の約1%が精神疾患により休職しており、また新規採用者のおよそ4%が採用後1年以内に退職しているという実態もある。そのため、学校現場の教員支援体制の充実を合わせて進め、「教員数を減らさないための施策」を講じる。
今年度は、臨床心理士などが学校を訪問し、全教員と面談を行うアウトリーチ型相談事業を2地区で開始。また、再任用教員が新人教員と共に学級担任をしながら、一対一でサポートを行う体制作りなどを進めてきた。来年度はこれに加え、小学校の新人教員に特化した相談事業の充実や、再任用教員による支援のさらなる拡大などを進める方針。文科省が実施可能とした産休・育休代替教員の前倒し任用については、「対応を検討中」としている。
さらに外部人材のさらなる活用として、スクール・サポート・スタッフのほか、小学校の副担任業務を担う支援員(エデュケーション・アシスタント)や小・中・都立学校の副校長補佐の配置などを進めており、来年度はその中で区市町村からのニーズが高く、効果的な取り組みをさらに拡充させることを検討している。
これに対し、教育委員からは「さまざまな形でこうした施策を考えていることは、すごくよいことだと思う。人数を増やすことが質の低下につながらないように工夫している」と評価する声のほか、「採用倍率の低い時期に採用された教員の支援が必要だ」「社会人特例選考の周知が不十分ではないか」といった指摘もあった。
さらに「定年退職後の教員による新人教員のサポートは非常に大事だが、新人教員にとって定年退職後の教員は『大先生』であり、『はい』しか言えないような力関係になってしまうのではないか。年の近い先輩による支援が必要だ」という声もあった。都の担当者は「若手のチューターによる支援に加えて、いろいろな相談に応じるベテランの活用を図りたい」と応じた。