岐阜市の教育施策の成果と今後の方向性について議論する「Gifu MIRAI’s Education 3Days」が1月10日から12日までの3日間、オンラインで開催された。12日には京都大学総合博物館の塩瀬隆之准教授を講師に迎え、「学びの多様化を実現する学校」をテーマに、同市立草潤中学校の取り組みや、今年度からスタートした市内5校の中学校における校内フリースペースについて意見が交わされた。
全国的に不登校児童生徒数が増加する中、岐阜市でも不登校児童生徒はこの5年間で約2倍に増え、2022年度は1126人だった。同市では「いつでも・どこでも・だれかとつながる 誰一人取り残さない不登校対策」を掲げ、21年4月に中部地方初となる公立の「学びの多様化学校」として草潤中を開校。そこに通う生徒たちが「安心できる居場所」「信頼できる大人」「個別最適な学び」があることで、自分が大事にされている実感を得て、自律に向けて歩みだせていることが紹介された。
こうした草潤中での取り組みを横展開していこうと、今年度からは市内5つの中学校に「校内フリースペース」を整備した。そのうちの1校、同市立三輪中学校の鷲見紀子校長は「どんな生徒が何人ぐらい来るのかも、全てが手探りの状況の中スタートした」と振り返る。校内フリースペースには県費常勤講師が担任として常駐。さらにほほえみ相談員、地域のボランティアも週1回来校している。
実際にスタートすると「不登校だった」「大人数は苦手」「気持ちを整えたい」「時々は登校したい」など、さまざまなニーズを持った生徒が利用した。教室で困っていたことやつらかったことを聞いてみると「大人数だと緊張して話せなくなる」「音がうるさい」「授業に追い付けていけない」などの声があった。
昨年4月当初は個別スペースで過ごすことが多かった生徒らだったが、5月ごろからは協働スペースでコミュニケーションをとる時間が中心となっていき、全校の掲示物を協働して作ったりするようになったという。
利用する生徒らはフリースペースの良いところを「心のよりどころ」「安心感がある」「自分のタイミングで一人になれる」「自分でなんでも決められる」と話し、自分の中で変わったこととして「学校に行きやすくなった」「自分のやりたいことが頑張れる」「欠席じゃなく、ここに行けばいいと思えるようになった」といった声が上がっている。
鷲見校長は「校内フリースペースが校内にあって良かったと実感している。学級の仲間との関わりもあるし、その気になったらいつでも教室の授業に参加できるなど、臨機応変に対応できる良さがある。また、学級担任や教科担任のフリースペースへの来室が生徒たちの励みになっている」と話した。
草潤中と三輪中の取り組みを踏まえて講演した塩瀬准教授は「草潤中は『学校らしくない学校』だが、どこが学校らしくないのかというと、たくさんの学びのメニューを用意していること」と述べた。また、草潤中の取り組みを一部でも広げていくという動きが、校内フリースペースであると述べ、「自分で決められるという余地が、本当はどこの学校にもあればいい。学び方を増やすということが、今、学校でできる取り組みとしては最先端なのではないか」と考えを示した。
それに対し、岐阜市教委の寺田圭子教育統括審議監は「学びの多様化学校だからできる、から脱却したい。ありのままの自分でいいんだと思える学校こそが、学びの多様化学校ではないか。そのためにも草潤中のノウハウを全ての学校に広げていく体制づくりをやっていきたい」と強調した。