小規模教委の広域連携強化など提言 来年度も議論継続へ

小規模教委の広域連携強化など提言 来年度も議論継続へ
「これまでの議論の整理」を基に協議を重ねる調査研究協力者会議(YouTubeで取材)
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 「令和の日本型学校教育」の推進に向けて、教育委員会の充実について検討している文科省の調査研究協力者会議は1月12日、第10回会合をオンラインで開き、「これまでの議論の整理」を基に、教育委員会の機能強化・活性化や教育委員会と首長部局との連携の在り方、小規模自治体への対応・広域行政の推進について話し合った。特に小規模自治体では、機能強化・活性化や首長部局との連携で十分な対応が難しい教育委員会が相当数存在すると指摘し、自治体内外の広域連携を進めつつ、都道府県による積極的な支援が必要と強調。他の自治体の教育長経験者など、外部から教育行政を担う人材を抜てきすることなどを方策として示した。調査研究協力者会議は当初、今年度中に報告をまとめる予定だったが、委員からの提案を受け、来年度も議論を継続することになった。

 この日の会合で示された「これまでの議論の整理」では、調査研究協力者会議の論点である①教育委員会の機能強化・活性化のための方策②教育委員会と首長部局との効果的な連携の在り方③小規模自治体への対応、広域行政の推進のための方策④学校運営の支援のために果たすべき役割――のうち、①~③について、これまでの議論を踏まえて目指すべき方向性を提示。④については今後検討するとした。

 「これまでの議論の整理」では、個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実させていく「令和の日本型学校教育」を教育委員会が支援していくには、各学校の自主性・自立性に委ねた取り組みを促していくとともに、社会の変化に素早く的確に対応できる組織づくりが求められている一方、制度上、首長部局から独立している教育委員会は、関係者との連携や組織の活性化に意識的に取り組まなければ、硬直的・閉鎖的になってしまう恐れもあると指摘。

 一般行政職と教員出身者の連携や、専ら教育委員会でキャリアを過ごす教育行政職の採用を検討したり、外部人材の積極的な登用や外部機関との連携を行ったりして、教育委員会事務局の機能を強化することや、教育委員会会議の活性化、総合教育会議の充実などを盛り込んだ。

 また、職員数が10人以下の教育委員会が全体の4分の1に上るなど、小規模自治体を中心に教育委員会のマンパワー不足が深刻となっていることから、広域連携制度を活用して自治体間連携を積極的に行っていくことや、指導主事の派遣・配置、小規模自治体では対応が困難な事務について、都道府県が積極的な役割を担うこと、オンラインの活用による学校事務の共同実施などを提案。さらに人材確保が難しい自治体では、他自治体の教育長経験者を外部から抜てきしたり、都道府県から助言を得たりすることも考えられるとした。

 この日の議論では、調査研究協力者会議の委員である岩本悠地域・教育魅力化プラットフォーム代表理事/島根県教育魅力化特命官が、自治体間の連携に関して「小規模自治体間での教育委員や指導主事の兼任、教育委員会と大学のクロスアポイントメント、例えば教員養成大学の教員と指導主事の兼任という形で、人的リソースのシェアリングを柔軟かつ円滑に行えるようにしていくことが、自治体間の広域連携や大学との連携促進につながりやすくなる」と提案。

 同じく委員の青木栄一東北大学教育学研究科・教育学部教授は「研究をしている際に総合教育会議の議事録は非常に役立つ。これは市民が教育政策の立案過程をトレースする際でも同じだと思う。教育委員会の会議というのは議事概要にとどまることも多く、総合教育会議の議事録が持つ意味は非常に重い。しかし、新教育委員会制度に移行して10年を迎えつつあるこのタイミングで、いろいろな事情からか、初期の総合教育会議の議事録が自治体のウェブサイトから消えていることもある。アクセスのしづらさも最近散見される。議事録は首長や教育長が代替わりしても公開されている状態を保ってもらうことをメッセージとして出してほしい」と述べ、教育委員会や総合教育会議における情報公開の重要性を指摘した。

 また、委員の村上祐介東京大学大学院教育学研究科准教授は危機管理対応の重要性を挙げ、「災害や事件事故など、さまざまな危機管理があると思う。教育の危機管理に関して好事例を国として収集して発信し、アイデアとしてこういうのがあるというのを出すと、首長や教育長も参考になるのではないか」と問題提起した。

 調査研究協力者会議では、1月18日に開催される中教審初等中等教育分科会で経過報告をした上で、これからの教育委員会のあるべき姿をビジョンとして示すなど、さらに議論を継続する必要があることを確認。今年度中に報告を取りまとめる予定を変更し、来年度も当面の間、協議を継続する方針を決めた。

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