【共通テスト】数学など易化 会場周辺では恒例の光景再び

【共通テスト】数学など易化 会場周辺では恒例の光景再び
【協賛企画】
広 告

 1月14日と15日に実施された2023年度大学入学共通テストについて1月15日、大手予備校が予想平均点を公表した。昨年度と比べ、全体的に予想平均点は上昇し、易化したと分析する一方、「生物」については平均点が過去最低だった昨年度より難化したとした。また、試験会場の周辺や最寄り駅では、教員らがのぼり旗などを手に最後の激励に駆け付ける姿が見られ、コロナ禍以前は恒例だった風景が戻ってきた。

全体的に易化の一方、生物は難化 スラング想起させる問題も

 データネット実行委員会(ベネッセコーポレーション、駿河台学園駿台予備学校)が15日に公表した予想平均点によれば、昨年度に平均点が過去最低となった「数学I・数学A」は易化し、昨年度と比べて13点高くなると予想。「各問題の導入部分で取り組みやすいものが多い」と分析した。河合塾大学入試情報サイトKei-Netでも同19点の上昇を見込み、「問題文は読みやすく計算量も抑えられ、全体的に解きやすくなった」と分析した。

 一方、同じく昨年度に平均点が過去最低となった「生物」は、データネット実行委員会・河合塾ともに「昨年度より難化」したとし、それぞれ10点、11点の平均点下落を予想。「全体的に、判断すべき情報量が多く、知識を活用して実験結果を読み取る必要がある」(データネット実行委員会)、「仮説を検証するための実験を考える問題も複数出題され、正誤の判断に迷うような紛らわしい選択肢も多かった」(河合塾)。

 その他、「倫理」第4問では「格差を是正するのは個人か社会か」というテーマで、若者のスラングになった「親ガチャ」を連想させるような問題が出題され、SNSで話題になった。「英語リスニング」では、バーチャルイベントで友人同士のプロフィール画像(アバター)を当て合う問題が出題された。

 全体として見ると、昨年度と比べて予想平均点は上昇し、5教科7科目文系型ではデータネット実行委員会が900点満点中520点(昨年度比12点増)、河合塾が543点(同36点増)を予想。5教科7科目理系型では、データネット実行委員会が同533点(昨年度比20点増)、河合塾が555点(同45点増)を予想した。

 

会場周辺や最寄り駅では教員が最後の激励

会場前の警備員に受験票を見せる受験生

 前回の試験の際、東京大学近くで刺傷事件が発生したことを受け、会場の出入り口には多くの警備員が配置された。警備員に受験票を見せた受験生は誘導を受けながら会場入りした。

 そんな中、試験会場や会場の最寄り駅では、テスト前最後の激励に駆け付ける高校教員や予備校関係者の姿が見られた。新型コロナウイルスの感染拡大で前回、前々回では見られなかった光景だ。

 2700人ほどが受験した千葉大学西千葉キャンパス(千葉市稲毛区)では、千葉県立成田国際高校(成田市)の教員3人が「がんばれ!成田国際高校」と書かれたのぼり旗やバット型のお守りを手に午前8時半には待機。自校の生徒を見つけるとのぼり旗を振りながら「ファイト」と声を掛けたり、こぶしとこぶしを合わせる「グータッチ」をしたりして生徒を鼓舞した。受験生は緊張が和らいだ様子で会場へと入っていた。

「グータッチ」で受験生を鼓舞する小泉教諭(右)
「グータッチ」で受験生を鼓舞する小泉教諭(右)

 3年生の担任を務める小泉鐘一教諭は「きょうまで頑張ってきたので、なんとか最後の一声を掛けようと思ってきた。自分たちが行きたい場所はそれぞれ明確に持っているので、なんとか滑り込みでも合格してもらえたらという気持ちでいっぱい」と話した。

 千葉大学西千葉キャンバスの最寄り駅であるJR西千葉駅には、同じく千葉県成田市の成田高校の杉﨑大幹教諭ら3年生の担任3人が「不動心」と書かれたのぼり旗とともに、生徒にティッシュを手渡していた。

 ティッシュには「受験番号を確認して自席に座ったら大きく深呼吸」や「気になっても2日目がある生徒は自己採点しない」など最後の注意点が書かれた紙が挟んであり、その裏側には3年生の担任8人が映った写真が印刷されている。杉﨑教諭は「最後にちょっとでも緊張がほぐれれば」とほほ笑む。

成田高校の教員が用意した最後の注意点が書かれたティッシュ
成田高校の教員が用意した最後の注意点が書かれたティッシュ

ティッシュを手渡す杉﨑教諭(右)
ティッシュを手渡す杉﨑教諭(右)

 高校教員になって5年目の杉﨑教諭にとって、1年生から担任した生徒を受験に送り出すのは初めて。「頑張れ」の激励とともに一つ一つ思いを込めてティッシュを手渡した。生徒を見送ると緊張した面持ちで、「祈るしかできない」とつぶやいた杉﨑教諭。「今日からずっと祈る日々が続くと思うけれど、一番きついのは生徒だと思う。できる限りのバックアップができるように支えていきたい」と力を込めた。

試験時間不足などのミスで再試験、4会場計267人

 大学入試センターによると、今回の試験において、試験監督のミスなどで正規の時間が確保されず、再試験の対象となったのは、16日午後2時現在で、▽愛知県立明和高校(再試験対象者101人)▽広島国際大学呉キャンパス(同78人)▽東京大学教養学部(同70人)▽大阪教育大学柏原キャンパス(同18人)――の4会場。明和高校は5秒、そのほかの3会場は1分間、規定の試験時間より早く終わっていた。

 不正行為は2件。東京都と静岡県の会場で、いずれも数学①の試験時間中に定規を使用した。

 交通機関の遅延などで、試験時間が繰り下げられたのは2日間で延べ11会場。それぞれ18分から100分繰り下げられ、延べ636人に影響した。山口大学工学部では、14日の昼休み中に研究室から出火し、火災報知機が作動。午後1時からの国語の試験開始が30分繰り下げられ、584人に影響があった。

広 告
広 告