能登半島地震で被災した児童生徒に学習機会を確保するため、盛山正仁文科相は1月16日の閣議後会見で、デジタル端末とWi-Fiルーターそれぞれ1500台を確保し、被災地からの要望に応じて小中高の児童生徒に提供する体制が整ったことを明らかにした。文部科学省では、迅速な支援を図るため、当面はグーグル社からデジタル端末とWi-Fiルーターの無償貸与を受け、追って政府の災害対策事業費で買い換える枠組みを構築した。盛山文科相は、被災によって1人1台整備されているデジタル端末が使えなくなった児童生徒への端末提供について、「取りあえず1500台でほとんどカバーできるのではないかと思っている」と述べた。
盛山文科相は被災した地域の児童生徒の就学状況について「現在被害の大きかった一部地域において、学校再開のめどが立たない中、児童生徒の2次避難が進められている。輪島市のみならず、珠洲市や能登町の子供たちについても、県内の施設に集団で避難する検討が進んでいること、能登6市町に在住する県立高校の生徒を対象に金沢市内に2次避難所が開設されることも承知している」と説明。1月16日付で総括審議官をリーダーとする「被災地における就学機会の確保に関するプロジェクトチーム」を設置し、個別の被災地の状況やニーズを把握して総合的な支援に取り組む考えを示した。
児童生徒の学習機会の確保を巡り、文科省は1月7日、GIGAスクール構想で1人1台配備したデジタル端末などを活用し、できる限り児童生徒の学びの継続に努めるよう、被災地などの教育委員会に通知している。その際、被災によるデジタル端末の故障や紛失、通信環境の途絶などで一部の児童生徒がICTを活用できない可能性を想定しつつ、それを理由に全体でICTを活用しないという判断は避けることも求めた。
こうしたデジタル端末の活用を強く求める一方で、文科省は震災発生直後から被災によるデジタル端末の故障や紛失、通信環境の途絶に見舞われた児童生徒への対応に着手。被害が大きい石川県内では、グーグル社の端末を採用している公立学校が多いことから、グーグル社の協力を受けて小中高の児童生徒を対象にデジタル端末とWi-Fiルーターそれぞれ1500台を確保した。
ただ、そうした備品調達に必要な資金を政府の災害対策事業費から拠出する場合、入札や契約などの手続きに数週間が掛かってしまう。このため、今回は当面、グーグル社に端末とWi-Fiルーターを無償貸与してもらい、必要な手続きを経て災害対策事業費で買い換える枠組みを構築し、早急に被災地に提供できる体制を整えた。アップル社とマイクロソフト社にも、端末の無償修理・交換、ソフトウェアの無償提供などの支援について検討を依頼している、という。
文科省の担当者は「デジタル端末とWi-Fiルーターは1500台でだいたい足りると思うが、何台必要になるのか、正確には分からない。学校の状況が十分に把握できてない自治体もある。避難する人も、避難しない人もいる。集団で避難する先にある程度まとめて提供するほか、ニーズを細かく捉えて対応するオペレーションが必要になる」(初等中等教育局修学支援・教材課)と指摘。デジタル端末については、グーグル社が対応できる1500台では足りない場合に備え、さらに1000台を提供できるよう準備を進めている、と説明している。