これからの時代に対応した養護教諭と栄養教諭の課題について検討している、文科省の「養護教諭及び栄養教諭の資質能力の向上に関する調査研究協力者会議」は1月17日、これまでの議論の取りまとめを公表した。養護教諭および栄養教諭は教師であると同時に他の教諭などとは異なる専門性を有しているとし、同協力者会議では、その特有の課題に着目して検討を進めてきた。議論の取りまとめでは、養護教諭や栄養教諭の資質能力の向上に向けて▽求められる役割の明確化▽指標を軸とした養成と採用、研修の接続や連携▽研修機会の確保▽ICTの積極的な活用━━が示された。
教員採用選考試験の採用倍率が全体的に減少傾向にある中、公立学校の養護教諭および栄養教諭の採用試験の実施状況は、2022年度において養護教諭が7.2倍、栄養教諭が9.0倍と高い状況にある。また、それぞれの設置状況について、養護教諭は全体として比較的配置率が高いものの、設置主体により配置率に差異が見られる。栄養教諭は、養護教諭と比べて全ての設置主体を通じて配置率が低い傾向にある。特に公立学校については、都道府県ごとに配置率に大きな差異が見られる。
こうした養護教諭や栄養教諭の現状と、特有の課題に着目し、同協力者会議の議論の取りまとめでは、①求められる役割(職務の範囲)の明確化②「資質の向上に関する指標」を基軸とした養成と採用・研修の接続、連携③新たな教員研修制度下における実効性のある研修機会の確保④職務遂行のインフラとしての ICT の積極的な活用━━の4点について、解決に向けた方向性を打ち出した。
まず①の「求められる役割(職務の範囲)の明確化」については、養護教諭および栄養教諭の役割の重要性に対する理解が進んでおらず、膨大な事務を個業により処理せざるを得ない現状がある。それを踏まえ、国や教育委員会において、養護教諭や栄養教諭の標準的な職務内容を策定し、職務の範囲を明確化する必要があると示した。
②の「『資質の向上に関する指標』を基軸とした養成と採用・研修の接続、連携」については、任命権者が策定する「資質の向上に関する指標」に養護教諭や栄養教諭の職務の専門性が必ずしも適切に反映されていないことから、関係者の共通理解のもと、養護教諭および栄養教諭の専門性を反映した指標を作成するとともに、それを教員研修計画に反映することが重要だとした。
③の「新たな教員研修制度下における実効性のある研修機会の確保」については、養護教諭や栄養教諭は、業務の代替が困難なことから研修機会の確保が難しいことに加え、初任者など経験が浅い教師に対する日常的な指導の機会が十分ではないと指摘。管理職のマネジメントにより、校内の全ての教師が一体となった学び合いの場を構築することや、教育委員会の指導主事や退職教員などを活用して、OJT による日常的な指導の中で研さんする機会、職場を離れて研修を受ける機会を充実させることが必要だとした。
④の「職務遂行のインフラとしての ICTの積極的な活用」については、GIGAスクール構想の進展により、1人1台端末環境や教室などの無線LAN環境の整備が進んでいる一方で、養護教諭や栄養教諭にはそれらの環境整備が行き届いておらず、業務における ICT活用が進んでいないと指摘。例えば、養護教諭による保健管理や健康相談、共同調理場に配置されている栄養教諭による給食管理や給食の時間における食に関する指導などをはじめ、効果的・効率的な業務推進のためのツールとしてICTを捉え、活用を進めていくことが不可欠とした。
同協力者会議は「今回の議論の取りまとめを契機として、養護教諭や栄養教諭のみならず、それ以外の学校関係者などにおいて活発な議論が喚起されることを期待する」としている。