内閣官房こども家庭庁設立準備室は1月24日、「就学前のこどもの育ちに係る基本的な指針」に関する有識者懇談会の第5回を、オンラインを交えて開き、素案の構成イメージ案について意見を交わした。素案の構成イメージ案には、「こどもと日常的には関わる機会がない人も含む全ての人と共有する」ことが明記されており、委員からは評価の声が上がった。また同指針がまとまった際には、子どもたちに分かりやすい形でフィードバックすることが重要との指摘も相次いだ。
この日は、事務局から「就学前のこどもの育ちに係る基本的な指針(仮称)素案の構成イメージ案」が示された。同指針は、「こども基本法の目的・理念に則り、置かれた環境や心身の状況に関わらず、生まれる前から幼児期までを通じて切れ目なく、こどもの心身の健やかな育ちを保障し、こどもの育ちを支える社会(環境)を構築する。そのために全ての人で共有したい基本的な考え方と、その取り組みの指針を示すことで、こども基本法の目指す、次代の社会を担う全てのこどもの権利の擁護と、将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現」を目的としている。
その上で、全ての人で共有したい理念として、▽全てのこどもが一人一人個人として、その多様性が尊重され、差別されず、権利が保障されている▽全てのこどもが安心・安全に生きることができ、育ちの質が保障されている▽こどもの声(思いや願い)が聴かれ、受け止められ、主体性が大事にされている▽子育てをする人がこどもの成長の喜びを実感でき、それを支える社会もこどもの成長を一緒に喜び合える━━の4つを挙げた。
また、生まれる前から幼児期までの「こどもの育ちの基本的な考え方」について、心の発達の鍵となるのは、「安心(安心の土台・安全な居場所)」と「挑戦(遊びを通して外の世界へ向かう)」の循環だとし、それを保障するための考え方を、全ての人と分かりやすく共有することで子どもの心の発達を保障していくとした。また同時に、全ての人が当事者となり、「こどもまんなか」という一貫した考え方の下で子どもの育ちを保障していくとしている。
明和政子委員(京都大学大学院教育学研究科教授)は指針案について、「全ての人でということが明記されたことに感銘を受けた。日本の子育てにおける歴史を振り返っても、大きな転換になるのではないか」と評価。また、全ての人で共有したい理念について、「子どもと大人は脳の発達も違う。大人と同じような権利を保障することのみならず、子どもであるからこそ個別化・差別化しなければいけない部分もあるということも、入れていただけないか」と要望した。
また、秋山千枝子委員(あきやま子どもクリニック院長)は、「子どもに直接関わらない人たちが子どもに関わることが、子どもにとってどういう意味があるのかというところが見えた方がいいのではないか。私は、そういう方たちが関わることは、子どもが社会に対しての信頼感を持つことにつながると思っている」と述べた。
秋田喜代美座長(学習院大学教授、東京大学名誉教授)は「こども基本法については、小中学生が分かりやすいようなリーフレットができたが、この指針についても、子どもたちにも分かってもらえるような形が必要ではないか。指針ができた際には、社会の全ての人に分かってもらうために、さまざまな場でワークショップなり、みんなで一緒に考えていけるような取り組みができればいいのではないかと、個人的には思っている」と考えを述べた。