子どもの体験格差を解消 中室牧子教授らがプロジェクト

子どもの体験格差を解消 中室牧子教授らがプロジェクト
記者会見でプロジェクトの狙いを説明する中室教授(右から2番目)
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 コロナ禍や経済状況の悪化などで顕在化した、子どもの体験活動の機会の格差を解消しようと1月26日、子どもや教育に関わる企業などがタッグを組み、「子どもの体験格差解消プロジェクト」を立ち上げた。2025年3月末までに、さまざまな事情で体験の機会が乏しい子どもたち1000人に、地方での宿泊型のプログラムなどの提供を目指す。並行して、教育経済学が専門の中室牧子慶應義塾大学総合政策学部教授の監修による、子どもの体験活動のエビデンスに関する調査研究も手掛ける。

 今回発足した「子どもの体験格差解消プロジェクト」は、社会課題の解決に取り組む㈱Ridilover(リディラバ)、学習塾の「花まる学習会」を展開する㈱こうゆう、さまざまな遊び・体験プログラムの予約サイトを運営するアソビュー㈱、中室教授が中心となり、経済的困難や不登校などで体験活動の機会が少なくなっている子どもたちに、自然体験、文化的体験、社会体験などを提供することを通じて、体験格差の解消という課題解決に挑む。

 プロジェクトでは、子どもの貧困問題に取り組む団体などと連携し、25年3月末までの3年間で、1000人の子どもたちを目標に地方への宿泊型の体験プログラムを提供する。そのための資金はアソビューの予約サイトを利用した際に付与されるポイントをユーザーが寄付するといった方法が想定されており、体験格差の問題に対する社会的認知の向上につなげる。

 中室教授の監修の下で進められる調査研究では、子どもの体験機会に関する実態を把握するとともに、体験格差の背景要因やそれを踏まえたより良い体験機会の在り方に関する提言を行う。

 プロジェクト発足にあたり都内で開かれた記者会見で、リディラバの安部敏樹代表取締役は『体験格差』に今こそ取り組むべき理由として「直接的な要因にコロナ禍の影響があると思っている。コロナ禍の中で修学旅行や遠足などのいろいろな体験活動が非常に制限されてきた。ここで手を打たないと、より『体験格差』が広がっていってしまうのではないか。このタイミングで見逃してしまっていいのかという危機感があった」と問題提起。

 中室教授は子どもの体験活動が認知能力や非認知能力を高めるとする研究成果があることなどを紹介した上で、「私たちの活動を通じて社会で生じている格差を縮小していくことができないかというのが、私自身が考えていることだ。一方で、私たちがやっている活動を継承していくことが必要だとも思っている。この手の非営利の活動はみんな良かれと思ってやっているが、時間も使っているし、お金も使っている。それが無駄打ちではないということは分からないので、きちんとデータで検証しながら、意味のある活動にしていくことも同時にやっていく。そういった役割を担えれば」と話した。

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