エジプトの未来を創る日本式教育の挑戦に学ぶ JICAが報告会

エジプトの未来を創る日本式教育の挑戦に学ぶ JICAが報告会
現地の学校での学級会の様子など、エジプトでの日本式教育の実践が報告された
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 JICA地球ひろばは、昨年12月に全国から15人の教員が参加して行われたエジプト・アラブ共和国での「JICA教師海外研修(教育行政コース)」の報告会を1月25日、オンラインで開催し、200人以上の教育関係者が視聴した。同国では特別活動を中心とした日本式教育モデルを取り入れたプロジェクトが実施されており、そうした学校の実践や子どもたちの変化について参加した教員らから報告があった。

 JICAでは、エジプト・アラブ共和国で2021年から、「特別活動を中心とした日本式教育モデル発展・普及プロジェクト」を実施している。それ以前の17年から先行事業として日本式教育の要素である特別活動や、日本の学校運営および学級経営方法、遊びを通じた学びなどの活動を、新設のエジプト日本学校(EJS)などの公立校に導入し、全人的教育のモデルづくりや全人的教育を支援してきた。

 今年度の海外研修は、昨年12月23日から30日までの7日間、同国を訪問して行われた。現地では特別活動を中心とした日本式教育モデルに取り組む学校や公民館などを訪問。視察のみではなく、参加者自らの発表の実施や、教員や児童生徒、JICA協力隊員らとの意見交換など、インタラクティブな活動が行われた。

 日本式教育モデルを取り入れた「EJSエジプト日本学校 EJS in Nasr City」に訪問したグループからは、日本式教育を取り入れることでどのようなメリットや変化があったのかについて、報告があった。

 同校では、「学級会」「学級指導」「日直」「遊びを通じた学び」「掃除」「保護者参加活動」「朝自習」「朝の会・帰りの会」「職員会議・校内研修」という9つの日本式教育が取り入れられている。例えば「掃除」は、導入時は保護者からかなりの反発があったそうだ。しかし、段々とその狙いが浸透していくと、理解が広まっていった。

 報告した神戸市教育委員会の石動(いするぎ)徳子さんは「形式だけでなく、特別活動の狙いや期待される効果も理解して、教員たちが取り入れようとしているように感じた」と話した。

 そして、こうした現地の教員や子どもたちの姿を感じ、帰国後に改めてこれまでの自身の特別活動について振り返ってみると、「日常的なもので、やっていて当たり前だと捉えていた」ことに気付き、「特別活動は人間関係形成や社会参画、自己実現を育む人づくりに寄与するものだと、改めて学び直した」と述べた。

 また「EJSエジプト日本学校 EJS in El-Shorouk 2」に訪問したグループからは、同校での学級会の様子について報告があった。同国での授業は一斉講義型が多く、教師が主導していることがほとんどで、学級会のような子どもが主体の活動は、子どもたちの自己肯定感や自己有用感を高める効果もあるという。

 学級会では、司会役の児童2人が他の児童らの意見を集約し、結論を導く役目を担っている。教師はあくまでサポートするのみだ。その日の学級会の議題は、「クイズ大会を成功させるために、どんな問題を出せばいいか」だった。子どもたちからは、「クイズ番組のような一般的な問題を出せばいい」「学校の授業で習ったようなアカデミックな問題を出したい」という提案で、意見が分かれていた。

 その後、全員で話し合いを進めていき、結果としてどちらの意見も採用することになった。「アカデミックな問題は、低学年の子には分からないのではないかという意見があったが、低学年の子でも分かるような問題にするという解決策を出すなど、うまく合意形成を図った素晴らしい話し合いだった」と、石川県輪島市立河原田小学校の浅見淳一校長は振り返った。

 また、日本式公民館に取り組む「ター公民館」について報告した大阪市立新巽中学校の山本昌平教務主任は「エジプトの学校ではまだまだ認知能力に偏りがちな授業になっていて、体験や遊びから学んだり、非認知能力を育んだりするような場が少ない。タ―公民館では、公民館からそうした場をつくっていこうと熱意を持って取り組んでいた」と報告。

 和洋九段女子中学校高等学校の新井誠司教頭は「この公民館は、日本式のシステムにエジプトで必要なものをプラスして取り入れていて、それが日本の見習うべき公民館の理想的な姿になっていた。私たち教員は世界の社会教育施設にも目を向けていく必要がある」と感想を述べた。

 特別活動パイオニアスクール「Sara Taqy-Allah Experimental Language School」について報告した福岡県教育センターの小川由有さんは、現地の高校生へのインタビューなどを通して感じたこととして、「言葉も文化も異なる私たちが、日本式教育を取り入れることを通じて一つになったような気がした。お互いの違いを理解し合うこと、そして教育を通してお互いの国が伸び合っていくこと、それが国際理解教育の意義や価値ではないか」と語った。

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