インクルーシブ教育「共に学べる環境整備を進める」 岸田首相

インクルーシブ教育「共に学べる環境整備を進める」 岸田首相
代表質問に答える岸田首相(参議院インターネット審議中継)
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 岸田文雄首相は1月26日、衆参両院で行われた代表質問で、国連の障害者権利委員会が昨年9月に日本の特別支援教育の見直しを求める勧告を行ったことについて、「勧告の趣旨を十分受け止め、インクルーシブ教育の推進に向けた取り組みを進める」と答弁し、具体的な取り組みとして「特別支援学校、特別支援学級、通常の学級、いずれにおいても障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に学べるよう、環境整備を進めていく」と説明した。また、給特法を廃止する意向の有無を問われたことに対し、「本年度実施の教員勤務実態調査の結果などを踏まえ、教職員の処遇見直しを通じた質の向上に取り組んでいく」と答えた。

 岸田首相は、国連障害者権利委員会の勧告について「勧告は法的拘束力を有するものではなく、また各国ごとにさまざまな制度があるものと承知している」とした上で、「勧告の障害のある子供を抱擁する教育を推進すべきとの趣旨については十分受け止め、インクルーシブ教育システムの推進に向けた取り組みを進めていく」との考えを表明した。

 さらに「具体的には、障害のある子供の教育については、わが国において特別支援学校等に在籍する子供が増加する中、本人および保護者の意向を踏まえつつ、特別支援学校、特別支援学級、通常の学級、いずれにおいても障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に学べるよう環境整備を進めていく」と続けた。

 施政方針演説で「包摂的な経済社会作り」を掲げた意図については、「老若男女、障害のある人もない人も、全ての人が生きがいを感じられる多様性が尊重される社会、意欲のある全ての方が置かれている環境に関わらず十全に力を発揮できる社会を目指すものであり、経済活動においても社会課題の解決と持続的な経済成長を実現していく上で、そうした社会を目指すことが重要であると考えている」と説明した。

 参院本会議で行われた代表質問で、水岡俊一議員(立民)の質問に答えた。国連の障害者権利委員会による勧告は障害者権利条約に基づいて行われるもので、昨年9月、日本が2014年に条約を締結して以降、初めてとなる勧告が実施された。その中では、日本の教育で懸念すべき課題について、「障害のある子供たちが隔離された特別教育の永続。特に知的または心理的障害のある子供たちや、より集中的な支援を必要とする子供たちにとって、通常の環境での教育はアクセスしにくいものになっている。通常の学校における特別支援学級の存在も同様である」と指摘されている。

 一方、学校現場の教員不足についても質疑が行われた。岸田首相は昨年1月に文科省が公表した教師不足に関する調査の結果に触れ、「全国の学校における厳しい状況が明らかになったと承知しており、政府として危機感を持って受けとめている」との認識を示した。

 これに関連して、鈴木俊一財務相は財政演説で「教職員定数の合理化」に触れた意図を問われ、「教職員定数については、これまでも少子化に伴う生徒の自然減を反映するとともに、社会情勢の変化に伴うさまざまな課題に対応するため、既存の定数を見直しつつ必要な措置を行ってきた。令和5(23)年度予算においても、小学校高学年の教科担任制の推進や小学校4年生の35人学級の実現などのため、必要となる教職員定数を措置することとしており、こうした対応を踏まえて、財政演説において『教職員定数の合理化等を図りつつ、必要な措置を講じる』と申し上げた」と説明。

 さらに「令和5年度予算においては、学校における働き方改革の効果を確実なものとするため、教員業務支援員やスクールカウンセラー、ソーシャルワーカーなど外部人材の活用のための予算も計上しており、教員が授業などに注力できる環境を整備することとしている」と言及。教員が授業などの本来業務に集中できる環境作りに取り組んでいるとして、理解を求めた。これも参院本会議で水岡議員の質問に答えた。

 また、岸田首相は、給特法を見直す必要があると考えているかどうかを問われ、「公立学校の教師の処遇を定めた給特法上の措置等については、本年度実施の教員勤務実態調査の結果などを踏まえ、教職員の処遇見直しを通じた質の向上に取り組んでいく」と答えた。衆院本会議で玉木雄一郎議員(国民民主)の質問に答えた。

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