幼保小接続期の教育の充実について議論している中教審の「幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会」(座長・無藤隆白梅学園大学名誉教授)は1月30日、第11回会合を開き、審議まとめ素案について議論を行った。審議まとめ素案では、架け橋期のカリキュラム作成や幼児教育の特性に関する共通理解などのほか、多様な背景を持つ子供たちの支援、幼児教育施設の機能と施設を在園児以外も含めた地域に開くことなど、多角的な観点から議論を取りまとめた。これに対し複数の委員から、こうした内容が「家庭ともしっかり共有されるべき」という意見が寄せられた。特別委は次回、最終的な審議まとめについて検討する。
審議まとめ素案では①架け橋期の教育の充実②幼児教育の特性に関する社会や小学校等との認識の共有③特別な配慮を必要とする子供や家庭への支援④全ての子供に格差なく学びや生活の基盤を育むための支援⑤教育の質を保障するために必要な体制など⑥教育の質を保障するために必要な調査研究など――の6つの論点について、現状の課題と目指す方向性を整理。
その中で「①架け橋期の教育の充実」では「小学校入学当初の子供が、小学校での学習や生活に関する自らの不安や不満を自覚し大人に伝えることは難しいと考えられ、一人で悩み抱え込むことにより、その後の小学校での学びや生活に支障をきたす恐れがある」として、小学校入学後のつまずきが「不登校の要因にもなりかねない」と指摘した。
こうした課題を踏まえ、「小学校低学年における教育全体においては、例えば生活科において育成する『自立し生活を豊かにしていくための資質・能力』を、他教科等の学習においても生かされるようにするなど、教科等間の関連を積極的に図る」「幼児教育施設と小学校が協働し、共通の視点を持って教育課程や指導計画などを具体化できるよう、架け橋期のカリキュラムを作成する」「小学校1年生の修了時期を中心に幼児教育施設と小学校が共に振り返り、架け橋期の教育目標や日々の教育活動を評価」などの方向性を示した。
また「②幼児教育の特性に関する社会や小学校等との認識の共有」では、「幼児教育はいわゆる早期教育や小学校教育の前倒しではなく、身体と感覚・感性を通じた体験が必要な時期である」「子供が主体的な遊びの中で試行錯誤し考えたり、先生の関わりや環境の構成を工夫したりすることにより、『主体的・対話的で深い学び』を実現している」といった共通認識が重要だと説明した。
加えて、障害のある子供や外国籍の子供など特別な配慮を必要とする子供を支援するため、医療・福祉などの関係機関との連携を強化することや、孤立を深めつつも情報過多で不安を抱える保護者のつながりを作ることや、幼児教育施設に在籍していない子供も含めた教育的な機能を地域に開くこと、自治体の幼保小の担当部局の連携・協働や一元化を進めることなど、多角的な観点から提言をまとめた。
この審議まとめ素案に対し、複数の委員から、保護者への周知の必要性を指摘する声が挙げられた。水野達朗委員(大阪府大東市教育委員会教育長)は「これが幼児教育施設と小学校、または福祉部局と教育委員会のための、限定的なものに終わってしまうのはとても残念。この議論のステークホルダーには保護者も必ず入ってくるべきで、今回のこの内容を家庭にもしっかり共有してほしいという思いを持っている」と述べた。
また秋田喜代美委員(学習院大学文学部教授、東京大学名誉教授)も「保護者向けにもうちょっと、架け橋期がなぜ大事なのか、架け橋期とは何なのかということが数ページで分かるようなリーフレットを(作ることにより)、子供や保護者にも伝わる、全国どこでも架け橋期という言葉が分かるような形での普及啓発をお願いしたい」と要望した。
中山昌樹委員(学校法人中山学園理事長)もまた「このプログラムの実効性において、保護者がどう関わるかは中心的な課題になる。素案では『保護者と幼児教育施設・小学校は一緒になって両輪で(子供を育てていく)』と書かれているが、保護者をお客さまではなく、仲間にしていく仕組み作りの研究も必要になると思う」と語った。
さらに鈴木みゆき委員(國學院大學人間開発学部教授)は「幼児教育施設での1日と、小学校の中での生活の1日は当然、段差がある。生活の連続性を意識できるとよいと思っている。特に家庭教育とのつながりに関しては、生活習慣は非常に重要なので、きちんと見通しを持って生活を作っていくのだというところを、家庭と教育施設が両輪として培っていけたらよい」と述べた。