「予防的な不登校対策」重視、政策パッケージ作成を指示 文科相

「予防的な不登校対策」重視、政策パッケージ作成を指示 文科相
不登校対策の取り組みについて説明する永岡文科相
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 小中学校の不登校児童生徒数が2021年度に24万4940人と過去最多を更新したことから、永岡桂子文科相は1月31日の閣議後会見で、不登校対策の総合的な政策パッケージを3月末までに策定するよう、省内に指示したことを明らかにした。永岡文科相によると、この取り組みは▽不登校の特例校の設置促進▽1人1台端末を活用したデータに基づく不登校の兆候の発見と早期支援▽全ての児童生徒が安心して学べる学校作りによる予防的な不登校対策の推進――の3つの柱で構成される。文科省では「最近の研究で、不登校やいじめなどの問題を予防するためには、学校環境そのものが持つ雰囲気を意味する『学校風土』が大切なことが分かってきた。こうしたエビデンスに裏付けられた予防的な不登校対策を新たに政策として取り入れていきたい」(初等中等教育局児童生徒課)と説明している。

 

 永岡文科相は会見の冒頭、不登校児童生徒数が過去最多を更新している現状について「多くの子供たちが学校の学びから置き去りにされているということは、教育の根幹を揺るがす憂慮すべき課題」と指摘。生徒主体の学校作りに取り組んでいる不登校特例校、岐阜市立草潤中学校を1月19日に視察したことに言及。3つの柱に触れながら「誰一人取り残されない学びを保障するための不登校対策について、こども家庭庁とも連携して、早急に検討を進めるように事務方に指示した」と表明。「今年度内をめどに実効性のある対策を取りまとめていきたい」と意欲を見せた。文科省では、今後、「不登校に関する調査研究協力者会議」(座長:野田正人立命館大学大学院特任教授)を開き、有識者の意見を求める方針。

 こうした3つの柱のうち、不登校の特例校の設置促進については、今後5年間に全ての都道府県・政令市に1校以上設置するとの従来の方針を拡充し、将来的に全国で300校の設置を目指すことが次期教育振興基本計画(2023~27年度)の審議経過報告案に盛り込まれている。300校を目標とした理由について、文科省では「子供たちが通える範囲に不登校特例校を整備する必要がある。そう考えると、都道府県・政令市に1校ずつでは十分ではない」(同課)と説明している。

 1人1台の学習用パソコンやタブレット端末を活用した不登校の兆候の発見と早期支援については、例えば、学校の朝の会でその日の気分を天気マークなどで端末に入力し、そのデータによって児童生徒の日常的な心身の健康観察を行うことを想定している。文科省では「データ的に見て、普段は課題がない子供であっても、心の浮き沈みはある。必ずしも家庭環境が厳しい子供を重点的にみていくだけでなく、全ての子供に日常的にしっかり対応していくことで、不登校の兆しを見つけ、早めに支援することができる。必要に応じて、福祉部門やスクールカウンセラー(SC)、スクールソーシャルワーカー(SSW)との連携もしやすくなる」(同課)としている。

 3つ目の予防的な不登校対策の推進について、文科省は「新しい視点」と位置付けている。文科省委託事業「子どもみんなプロジェクト」による研究成果で、学校環境そのものが持つ雰囲気を意味する「学校風土」が子供たちの行動や学力に影響があることが判明。その学校風土を科学的に測定する「日本学校風土尺度」が開発された。文科省では、こうした尺度をエビデンスとして活用し、子供たちが気分よく登校し、学習に取り組める学校環境作りを進め、予防的な不登校対策につなげていく考え。

 同課の清重隆信課長は「全く課題が顕在化してない子供たちへのケアという部分は、文科省の教育政策もノーマークだったし、学校もノーマークだったと思う。ただ、そうした学校風土のところから不登校が増えてきているのではないか、という懸念がある。日常的に学校に通っている子供たちにもしっかり対応していくことによって、生きづらさを感じている子供を減らせるのではないか。それが不登校対策につながるということを考えたい」と説明。「研究によれば、誰一人取り残さない学びを保障する要因には、学校風土や教育環境のような動的要因と家庭環境や先天性といった静的要因がある。静的要因は学校ではなかなか動かしがたいが、動的要因については学校がその気になれば改善できる。そこに注目している」と話している。

 文科省委託事業「子どもみんなプロジェクト」の研究成果は「ハンドブック2020」で見ることができる。

 ※教育新聞では「子どもみんなプロジェクト ハンドブック2020」の第3章「『勇気の旅』で不安への対応力を養う」を担当した千葉大学子どものこころの発達教育研究センター、浦尾悠子特任講師による連載「認知行動療法に基づく不安の予防教育プログラム『勇者の旅』」を掲載しています。

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