昨年11月に行われた、都内の中学3年生を対象とした英語スピーキングテスト(ESAT-J)について、都教委は2月2日、第2回定例会で、都教育庁から実施状況の報告を受けた。来年度に向けた改善点などが示されたことを受け、教育委員は「実施体制にかなり改善の余地がある。試験の内容についてもしっかり検証・改善が必要だ」と指摘。また本試験の一部で、中学校の学習指導要領を超える文法事項が含まれていたことについて、定例会後に記者会見した都教育庁指導部の担当者は、今後「学習指導要領に沿った良問を作っていく」と説明した。
同日の報告によれば、スピーキングテストの受験者数は7万1197人。平均スコアは60.5で、昨年度より6.8ポイント上昇した。この理由について都教育庁指導部の担当者は「中学校における4技能の指導の成果」と説明し、難易度や採点基準の変更によるものではないと明言。来年度から、中学1・2年生にもスピーキングテストを導入していく方針を示した。
その上で今後の実施に向け、スケジュールと実施体制の観点から改善策を提示。まず、スケジュールについては▽受験申し込みや特別措置、追試験などの日程や様式を説明会などで一括して提示し、生徒や保護者、中学校の教員が見通しを持って準備できるように配慮▽予備日の申し込み手続きを簡素化し、生徒や保護者、中学校の教員の負担を軽減▽特別措置などの申請に関する丁寧な説明により、都教委による承認手続きを迅速化▽会場や試験当日の時程などを通知する時期を早め、生徒や中学校の事前の準備期間を確保――といった改善策を示した。
また、試験の実施体制については▽音声などに配慮し、生徒がより集中した環境で受験できる教室配置▽当日のコールセンターの対応で、欠席などの連絡を受ける回線を増やすなどにより混雑を回避し、応答率を改善――といった対応を取るとした。
これに対し教育委員からは「3つの観点から改善が必要。1点目は試験の実施体制で、かなり改善の余地がある。監督者の募集など事前のところから含めて検証し、改善していただきたい。2点目は試験の内容。よりよい試験となるよう、英語教育やテスト評価の専門家とともに検証してほしい。さらに3点目として、どのように現場の実践につなげるかも検証してほしい」といった意見が寄せられた。
今回のスピーキングテストでは、出題範囲について「中学校学習指導要領(2017〈平成29〉年告示)に基づく内容とする」と告知されていたが、本試験の一部で、高校の学習指導要領に示されている「助動詞(may)と完了形(have seen)を用いた過去に関する推測の表現」が出題されていた(関連記事:本紙電子版昨年12月5日付「都英語スピーキングテスト 中学校指導要領を超えた内容出題」)。
このことについて、定例会後に記者会見した都教育庁指導部の担当者は、今回の試験での解答に影響はなかったとしつつも、「教育委員からの指摘にあったように、試験の内容についてはよりよい良問、子供たちの能力判定がしっかりできる良問を作っていこうという努力は常にしていきたい。今でも、出題方針としては学習指導要領(に基づく内容)というのを挙げているので、出題方針に沿って決めていきたい。学習指導要領に沿った良問を作っていくということだ」と、今後の方針を説明した。
また、試験が前半・後半グループに分かれて実施された際、前半グループの生徒の音声が待機する後半グループの生徒に聞こえていた可能性が指摘されている点については、「前半・後半で2つに分けて実施した会場について各グループの平均スコアを確認したところ、差はなかった」として、試験への影響を否定。「スピーキング(テスト)なので声は聞こえるが、特定の声や意味を聞き分けることはできなかったと認識している。今後、子供たちが能力を発揮できるような環境を整えるようにしていく」と説明した。