永岡桂子文科相は2月6日の衆議院予算委員会で、年度途中の教員不足について、「文科省が各教育委員会から聞き取ったところ、年度後半の方が深刻化する傾向もあると聞いている」と述べ、文科省が2021年に年度初めを対象に行った初の教員不足の調査結果よりも、年度途中には教員不足が深刻になっているとの認識を示した。背景として教職員の産育休や病欠を代替する臨時的任用教員などの人員確保が十分にできないことを挙げた。
永岡文科相は「全国的な教師不足の実態については、大変憂慮する状況であると危機感を持って受け止めている」と指摘。今年度後半の教師不足の状況について、「具体的な数の調査は行っていないものの、文科省が各教育委員会から聞き取ったところ、年度後半の方が深刻化する傾向もあると聞いている。各教育委員会からも現状をうかがいながら、引き続き必要な対策を講じていく」と答弁した。大石あきこ議員(れいわ新選組)の質問に答えた。
年度途中の教員の未配置が起きている背景について、永岡文科相は「年度初めの4月1日に、『これで大丈夫』ということでスタートした学年ではあっても、教職員が途中で妊娠などがあったり、体調不良になったりして、欠席になる可能性もあるかと思う。その場合、以前ならば、正規の教員ではないが(臨時的任用教員や非常勤講師といった教員が)いた。そこのところが今は人員の確保が大変困難となっているということだと思っている」と説明した。
文科省は昨年1月、教員不足の実態を各教委などからの聞き取りで初めて調べた調査結果を公表した。調査では教員不足を「臨時的任用教員等の講師の確保ができず、実際に学校に配置されている教師の数が、各都道府県・指定都市などの教育委員会において学校に配置することとしている教師の数(配当数)を満たしておらず欠員が生じる状態を指す」と定義。結果によると、21年度始業日時点の小・中学校の教員不足は合計2086人、5月1日時点では1701人だった。高校では始業日に217人、5月1日時点で159人。特別支援学校で同じく255人、205人だった。
こうした年度当初の状況よりも、年度途中に教員不足が深刻化することは、今年2月2日、全日本教職員組合(全教)がまとめた実態調査の結果からも示唆されている。全教調査によると、昨年10月時点で教職員の未配置が24道府県4政令市で1642人。5月時点と10月時点の調査結果を比較可能な16道府県4政令市で比べると、教職員の未配置は5月時点から450人増えて10月時点で1184人に膨らんでいた。途中退職による欠員に加え、20代、30代の教職員が増えたことによる産育休やメンタルヘルス上の問題による病休が増加している一方、代替となる臨時的任用教員や非常勤講師が不足し、代替の教職員を確保できない現状が、一部の自治体に対する調査とはいえ、浮かび上がる結果となっていた。
また、永岡文科相は、正規教員の計画的な採用を自治体に求める一方、計画的な教職員定数改善計画の策定が小泉政権下で行財政改革が進められた06年度予算編成以降、見送られていることについて、「義務標準法の制定以降、これまで中期的な定数改善を行ってきており、直近では定数改善計画と名付けられた計画は、05年度までの第7次定数改善計画となっているが、現在も法律改正を行うなどにより、計画的な改善は行っている」と理解を求めた。
具体的には、基礎定数の計画的な改善として、「障害のある児童生徒に対する通級による指導等のための教職員定数」を17年度から26年度までの10年計画で基礎定数化を進めていることや、小学校の35人学級について21年度から25年度までの5年間で整備を図っていることを挙げた。また、加配定数についても、小学校高学年の教科担任制に対応して22年度から4年程度で改善を図っていることを例示しながら、「できる限り見通しを持った改善を図ることが望ましいと考えている」と説明。「今後とも中期的な見通しを持った教職員定数の改善に努めていく」と述べた。
大石議員は「異次元の教員未配置が起こっている。教員が体調を崩したり、産休などで休みを取ったりしても代わりの先生が来ない。これが常態化している。学校内で待機児童、待機生徒が続々と生まれている」などと述べ、永岡文科相に対応をただした。