習い事も合理的配慮を 障害児通所支援検討会が報告書素案

習い事も合理的配慮を 障害児通所支援検討会が報告書素案
報告書素案の内容を議論した障害児通所支援の検討会(YouTubeで取材)
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 今後の障害児通所支援の方向性を議論してきた厚労省の検討会は2月6日、第9回会合をオンラインで開き、事務局から示された報告書素案の内容を協議した。素案では、共生社会の実現に向けて、障害の有無にかかわらず、年少期から多様な子どもたちが共に過ごし、学び合いながら成長していくインクルージョンの推進を掲げ、民間の習い事でも合理的配慮がなされ、障害のある子も地域の子と一緒に通うことが望ましいとした。

 報告書素案では、これまでの障害児支援に関する国の議論を受け継ぎ、障害のある子どもの意見の尊重と最善の利益を優先して考慮していくこと、家族支援の重視、インクルージョンの推進を重視していくことを基本的な考え方として示し、児童発達支援センターや、児童発達支援・放課後等デイサービス、保育所等訪問支援の今後の方向性を整理した。

 このうち、児童発達支援に関しては、乳幼児期の総合的な支援を提供できるように、▽健康・生活▽運動・感覚▽認知・行動▽言語・コミュニケーション▽人間関係・社会性――の5領域とのつながりを明確化した個別支援計画のフォーマットをガイドラインで明示することの検討や、多職種でチームアプローチができる体制の推奨、保護者の就労などによる預かりニーズへの対応などを挙げた。

 放課後等デイサービスについては、ガイドラインを改訂し、学童期・思春期などの幅広い年齢層に対応し、メンタル面の課題や不登校、就労移行、進学準備などの支援内容を提示して、年代に応じた支援を推進する必要があると強調。放課後等デイサービスは学校での生活を前提とした支援であることから、個別支援改革と個別の教育支援計画などを連携させ、学校側の生活を把握しながら一人一人に合わせた一貫した支援を提供していくことや、精神的な理由などで学校に通学できない障害のある子が放課後等デイサービスで休息でき、不安を解消したり、社会的コミュニケーションが取れたりできる場所として、教育や医療機関などと連携しながら支援していく必要性を打ち出した。

 また、報告書素案では、児童発達支援と放課後等デイサービスに共通する項目として、いわゆる見守りやピアノ・絵画などのみの指導をしているケースがあることへの考え方を明記。これらについては、子どもの安心・安全やウェルビーイングを高める観点などで意味があるとしつつ、これらのみを提供する支援は公費によって負担する児童発達支援にはふさわしくないと指摘し、事業所の活動プログラムや個人に対するアセスメント、個別支援計画で、5領域とのつながりを明確化した上で提供すべきだとした。

 さらに、一般的な習い事については、インクルージョンの推進や共生社会の実現の観点から、受け入れ先で合理的配慮がなされ、地域の子と一緒に通うことが望ましいとし、事業者の合理的配慮の提供やインクルージョンの取り組みを推進することが重要だとした。

 この日の議論で加藤正仁構成員(全国児童発達支援協議会会長)は、放課後等デイサービスについて「本来は子どもの発達支援のはずだが、今の『放デイ』の事業は保護者の就労支援施策、労働施策にすり替わってしまっているところがあり、良い意味でも悪い意味でもパンドラの箱を開けた。これをクリアにして整理しないといけない。どちらも大事だが、ボタンのかけ違いが大きくなってしまうのは望ましい状態ではない」と、子どもの発達支援と保護者の就労支援を分けて検討する必要性を指摘した。

 又村あおい構成員(全国手をつなぐ育成会連合会常務理事・事務局長)は、習い事における障害のある子どもの受け入れについて「記述自体に異論はないが、ただ事業者に対して『合理的配慮が義務化されたので障害のある子もお願いします』というだけにならないか。これではインクルージョンは進まない。障害児通所支援事業所が、合理的配慮を実現するためになすべきことを示し、地域のインクルージョンの中核としての事業所の役割に入れるべきだ」と提案した。

 稲田尚子構成員(帝京大学文学部准教授)は「インクルージョンに関して、児童発達支援センターがその中核的な機能を担うことに関しては同意するが、ただ、インクルージョンの主体は学校、幼稚園、保育所であるのではないか。教育・保育との連携や役割分担をしっかりと書き加えてほしい」と述べ、インクルージョンの観点からの教育・保育機関との連携の在り方をさらに鮮明にするように求めた。

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