給特法の見直しを視野に入れた教職員の処遇改善について、岸田文雄首相は2月10日、今年6月ごろに閣議決定する「経済財政運営と改革の基本方針2024」(骨太の方針)で、方向性を示す考えを表明した。首相官邸のホームページによると、岸田首相は埼玉県戸田市内でデジタル端末を使った授業を視察し、若手の教員らと懇談した後、「教職の魅力をより向上させ、優れた人材を確保するために、働き方改革等を進めていくことの大切さを改めて感じた」と説明。23年春に文科省が公表する教員勤務実態調査の結果の速報値を踏まえ、「骨太の方針に方向性を示すことを目指して、働き方改革を加速化し、処遇の見直し等を通じた教育の質の向上に努めていきたいと思っている」と述べた。
24年度の予算編成方針となる「骨太の方針」を巡っては、すでに自民党の「令和の教育人材確保に関する特命委員会」(委員長・萩生田光一政調会長)が、給特法の見直しを含めた教職員の働き方改革や処遇改善を「骨太の方針」に盛り込むことを求めて有識者などへのヒアリングを続けており、今年5月ごろまでに議論を取りまとめる考えを示している。こうした流れの中で、岸田首相が「骨太の方針」に方向性を示す考えを表明したことで、政府が24年度以降、予算措置を含めて教職員の働き方改革や処遇改善に取り組む見通しがより明確になってきた。
首相官邸のホームページによると、岸田首相は2月10日、永岡桂子文科相とともに、同市の市立戸田東小学校を訪れ、児童の1人1台端末や3Dプリンターなどのデジタル設備を活用した授業を視察。続いて、中学校の若手教員と意見交換を行った。
終了後、首相は記者団に対し、GIGAスクール構想による授業でのICT活用について「本日視察した戸田東小学校を、特定の自治体の先端事例ということで終わらせるのではなく、これを全国に展開させていくことが必要であると感じた」と説明。23年度予算案に盛り込んでいるGIGAスクール運営支援センターの拡充を通じて「地域間、学校間の端末活用の格差を是正する取り組みを進めるとともに、戸田市を始めとする好事例を創出し、展開する取り組みを本格的に進めていきたい」と述べ、自治体や学校の間で生じているICT活用の格差を是正していくことに意欲を示した。
若手教員との懇談については「教育のデジタル化に加え、学校における働き方改革、さらには子育てとの両立についても意見交換を行った。教職の魅力をより向上させ、優れた人材を確保するために、働き方改革等を進めていくことの大切さを改めて感じた」と説明。今年春に公表する教員勤務実態調査結果の速報値の結果を踏まえ、「骨太の方針に方向性を示すことを目指して、働き方改革を加速化し、処遇の見直し等を通じた教育の質の向上に努めていきたいと思っている」と述べ、教職員の処遇改善について「骨太の方針」に盛り込んでいく考えを明らかにした。
視察に同行した後、永岡文科相は文科省で閣議後会見を行い、岸田首相が「骨太の方針」で教職員の処遇改善について方向性を示す考えを表明したことについて、「文科省においては、22年度実施の教員勤務実態調査の速報値を春ごろに公表することとしている。その結果を踏まえ、給特法などの法制的な枠組みを含めた処遇などの在り方をはじめ、さまざまな関連政策について検討することとなると考えている。教職の魅力向上、優れた人材を確保することができるように、しっかりと検討したいと思っている」と、従来の見解を改めて説明した。
文科省では、今年春の教員勤務実態調査の速報値公表に先立ち、昨年12月に有識者や教育委員会、学校関係者で構成する調査研究会を立ち上げ、教員の処遇や勤務制度を巡る情報収集や論点整理に取り組んでいる。教員勤務実態調査は、速報値に続き、24年3月ごろに公表する確報値で、調査データのクロス集計などから効果的な働き方改革の取り組みを描き出すことも目指している。
また、2月10日に行われた戸田東小学校の視察後に行われた記者団とのやりとりで、岸田首相は、卒業式ではマスクを着用しなくてもいいとの見解も、合わせて示した。岸田首相は「卒業式においては、換気など感染対策を講じた上で、国歌等の斉唱や合唱のときを除き、児童生徒と教職員はマスクを着用しないことを基本としたい。もちろん、マスクの着用を希望するお子さんもいると思う。決して着脱を無理強いすることがないように求めたい」と説明した。これに続いて同日夕、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部は卒業式について「マスクを着用せず出席することを基本」とすることを決定。文科省はこうした内容を都道府県・政令市の教育委員会に通知した。