予算権限を現場に委譲 学校の自律高める教委にヒアリング

予算権限を現場に委譲 学校の自律高める教委にヒアリング
学校運営の支援のために教育委員会が果たすべき役割についてヒアリングを行った調査研究協力者会議(YouTubeで取材)
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 教育委員会の機能強化・活性化などの課題を検討している文科省の調査研究協力者会議は2月13日、第11回会合をオンラインで開き、学校運営の支援に向けた教育委員会の取り組みについて、自治体からヒアリングを行った。福岡県春日市教委からは予算編成・執行の権限を学校に委譲した成果が、長野県塩尻市教委からは隣接する山形村、朝日村と連携した教育事務支援室の取り組みがそれぞれ紹介され、学校の自律を高め、業務の効率化につながるなどの成果が報告された。

 調査研究協力者会議では前回会合までに、論点であった①教育委員会の機能強化・活性化のための方策②教育委員会と首長部局との効果的な連携の在り方③小規模自治体への対応、広域行政の推進のための方策④学校運営の支援のために果たすべき役割――のうち、①~③については「これまでの議論の整理」として方向性をまとめていたが、④については、今年度中に報告をまとめる予定だったスケジュールを改め、継続して検討することとしていた。この日の会合では、新たに④の議論に入るために、先進的な取り組みを行っている春日市教委と塩尻市教委に対してヒアリングを実施した。

 春日市教委では、2001年度から教育委員会が行ってきた学校の予算執行権限の一部を各学校に委譲。その後、予算編成権も各学校に委譲した。予算編成プロセスは「学校予算総枠配当方式」と呼ばれ、学校規模などを踏まえ予算額の枠を教育委員会から学校に示した上で、校長が教頭、学校事務職員、教員らを交えた予算委員会を開き、その学校の予算案の素案を作成。教育委員会に趣旨説明を行うなどして、最終的な予算案を固めていくという。

 事例発表を行った春日市教育委員会学校教育課学校保健担当の岡﨑麻理子課長補佐は「学校予算総枠配当方式の実施により、学校は独自の取り組みに挑戦しやすくなり、教育委員会は定型業務のスリム化が実現し、政策形成を行う余裕が生まれた。その結果、学校は教育委員会の指示や意向を重視する姿勢から主体的な判断をするように変化し、教育委員会も前例踏襲の傾向を改め、積極的に改革を進める姿勢に変化した。次第に学校と教育委員会の関係が指揮命令関係の縦から、支持・支援関係の横へと転換していった」と成果を強調した。

 一方、塩尻市教委では17年度から、学校事務職員の研究グループと業務の効率化に関する共同研究をスタート。赤羽高志教育長は「学校の働き方改革に本格的に着手する必要があるという教育委員会の立場と、学校経営への参画、教育関係機関との連携により学校の教育活動の充実を図る必要があるという学校事務職員の思惑が一致した。共同研究では市教委と学校事務の間でそれぞれの諸問題・課題を共有し、市教委も学校もお互いにWin-Winになれるような改善を行った。18年度から各種申請書類の簡素化、新入生に関わる事務の市教委への移管などを進め、新たに予算措置を伴うことなく25の負担軽減策を実施し、1校当たり年間180時間の軽減を行った」と説明した。

 こうした成果を受けて、20年12月に塩尻市教委は隣接する山形村、朝日村と学校間連携の協定書を結び、塩筑南部教育事務支援室を発足。各校の事務職員が業務の改善に向けた研究を進めたり、共同での事務作業を行ったりしながら、学校事務の機能強化を図っているという。

 報告を踏まえ、戸ヶ﨑勤座長代理(埼玉県戸田市教育委員会教育長)は「教職員の負担軽減について、学校現場をよく知る学校事務職員自身が検討して改善提案できる仕組みは、学校事務職員に期待される役割を十二分に発揮して、より実効性の高い施策を打ち出すことができる点で、他の自治体も大いに参考になる。近隣の自治体を巻き込んでいる点でも自治体間連携の一つのモデルになるのではないか。これは、事務職員だけの話ではなく、教育委員会事務局においても同様だと考えている」と指摘。「自律的・機動的な学校運営を実現する上で自走する学校を支援するためにも、学校に裁量を与えるべき事項と、学校の負担軽減のために教育委員会がしっかり担っていくべき事項を、これまでの事例を参考にしつつ、この会議でも検討を深めていく必要がある」と述べた。

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