不登校対策の「目指す姿」、安心な学校作り掲げる 永岡文科相

不登校対策の「目指す姿」、安心な学校作り掲げる 永岡文科相
不登校に関する調査研究協力者会議であいさつする永岡文科相=2月14日、文科省(河嶋一郎撮影)
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 小中学校の不登校児童生徒数が過去最多を更新する中、永岡桂子文科相は2月14日、オンラインで開かれた不登校に関する調査研究協力者会議の席上、全ての不登校児童生徒への学びの場の確保、全ての子供にとって安心な学校作り、不登校の科学的な把握などを盛り込んだ「不登校対策の検討にあたっての方向性(目指す姿)」を提示した。文科省は全国の教育委員会に不登校への取り組み状況を聞き取った調査結果を報告。それによると、回答した市区町村の1075教委のうち、通常の教室に入りづらい児童生徒が学ぶ特別な教室について、140教委が全ての学校に整備していると答えた一方、297教委が整備している学校はないと答えた。

 会議の冒頭にあいさつした永岡文科相は、予防的な対策を重視した不登校対策の総合的な政策パッケージを3月末までに策定するよう、1月31日に文科省内に指示したことを説明。「今回、私から対策の検討にあたっての方向性、つまり、私が考える不登校対策の先にある学校や社会の目指す姿を(会議資料として)配布した」と述べ、「不登校対策の検討にあたっての方向性(目指す姿)」として4項目を説明した。

 

 永岡文科相が示した4つの方向性は、第1に「不登校の児童生徒の全てに学びの場を確保し、学びを継続する」とした。具体的には、不登校特例校や教育支援センター、サポートルームなどを含め多層的な学びの場を確保するとともに、学校に来られなくてもオンラインで授業や支援につながることができたり、学校に戻りたいと思った時にクラスを変えたり、転校したりするなど別集団への移動が認められることを挙げている。

 第2は「心の小さなSOSを見逃さず、『チーム学校』で支援する」。1人1台端末を使って児童生徒の心と体の状態を可視化することで、心の不安や生活リズムの乱れに教師が確実に気付くことができる環境を作り、そこで発見した変化に応じて早期に最適な支援を行うほか、教育と福祉の連携を通じて児童生徒や保護者が必要な時に支援が行われる体制を目指す考えを示した。

 第3は「学校を『みんなが安心して学べる』場所にする」。それぞれの良さや持ち味を生かした主体的な学びがあり、みんなが活躍できる機会や出番がある学校作りや、トラブルが起きても学校はしっかり対応をしてくれる安心感を確保する。また、障害や国籍言語などの違いを肯定的に捉え、いろいろな個性や意見を認め合う雰囲気がある学校作りを挙げた。

 第4は「『不登校』を科学的に把握する」として、不登校の要因や不登校の児童生徒の状況をデータで客観的に把握するとともに、個々の状況に応じた効果的な対応方法を確立していくことを目標に掲げた。

 続いて、永岡文科相の指示を受け、文科省が急きょ、不登校への取り組み状況について、全国の教育委員会に聞き取り調査を行った結果も報告された。それによると、通常の教室に入りづらい児童生徒が学ぶ特別な教室について、小中学校における整備状況を聞いたところ、全国1700あまりの市区町村教委のうち1075教委が2月13日までに回答し、「全ての学校に整備している」が140教委、「1校であっても、整備している学校がある」が638教委、「整備している学校はない」が297教委だった。

 不登校児童生徒の学びの場として教育支援センター(適応指導教室)を設置しているかを市区町村教委に聞いたところ、回答のあった1075教委のうち、「単独で設置している」が706教委、「他市区町村との共同設置している」が74教委、「設置していないが設置を検討している」が84教委、「設置しておらず設置の検討もしていない」が211教委だった。

 不登校特例校の設置について市区町村教委に聞いたところ、回答のあった1075教委のうち、「設置している」が9教委、「設置しているがさらに設置を検討している」が3教委なのに対し、「設置していないが設置を検討している」が231教委、「設置しておらず設置の検討もしていない」が832教委だった。

 1人1台端末のアプリやソフトウェアを使って、児童生徒の心や体調の変化にいち早く気付く体制をとっているかを市区町村教委に聞いたところ、回答のあった1075教委のうち、すでにアプリやソフトウェアを使っている教委は237教委、現在は使っていないが今後活用を検討している教委は372教委、現在使っておらず今後の活用の検討もしていない教委は466教委だった。

 こうした不登校対策の内容と実情を受け、委員からはさまざまな意見が出された。

 不登校の児童生徒全ての学びの場を確保することについては、「大前提として場所だけでなく、子供たちの学びたいという気持ちを尊重していくという気持ちがなければならない」「不登校の出現率を下げるのが目標ではない中で、何を目指していけばよいのか評価の指標を見直す必要がある」「保護者の支援が必要だと実感している。保護者の不安などに応える助言を行いながら、子供たちの人間関係力を高めていくような不登校支援をしていくことが必要だ」といった指摘が出された。

 児童生徒のSOSを見逃さずチーム学校で支援することについては、「アセスメントは大事だが、前提として子供たちが正直に回答したくなる学校、先生との関係を構築することが必要。信頼感がないと、正直に自分の心を言うことは難しい」との発言があった。

 学校を安心して学べる場所にするという方向性については、「教員たちも大変忙しいので学校に多様な主体が関わっていくことが大切だ」「現状は学校現場で余裕が少ないからもっと人的支援があればいい」「スローガン倒れにならないよう人とお金が必要だ」などと、学校のマンパワーの確保などが必要との見方が相次いだ。

 不登校を科学的に把握するという考え方には「変調が見えているのに、不登校になっていってしまうケースが多い。その子たちに何をしていけばいいのか。アセスメント力がないとデータは使い切れない」という意見もあった。

 文科省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、小中学校の不登校児童生徒数は21年度に24万4940人となり、前年度より4万8813人増えて過去最高を更新している。高校の不登校生徒数は5万985人で、前年度より7934人増えている。

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