通常学級の障害のある子への支援の在り方 最終報告に向け議論

通常学級の障害のある子への支援の在り方 最終報告に向け議論
最終報告素案について議論が交わされた(YouTubeで取材)
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 文科省の「通常の学級に在籍する障害のある児童生徒への支援の在り方に関する検討会議」は2月15日、第8回会合をオンラインで開いた。前回会議で示された報告素案について引き続き議論し、委員からは「まず個別的支援を検討するのではなく、学級全体に対してできる支援を検討するような記載が必要ではないか」「教員が研修やスキルアップしやすくなるような体制を、国として整備していくことも書き加えるべきではないか」などの意見が出された。来月に予定されている同検討会議において、最終報告書が取りまとめられる。

 少子化により児童生徒数が減少する中、特別支援学校だけでなく、小・中・高校においても特別支援教育を必要とする児童生徒が増加している。学校教育は、障害のある子供の自立と社会参加を目指した取り組みを含め、「共生社会」の形成に向けて重要な役割を果たすことが求められており、インクルーシブ教育システムの構築のための特別支援教育の推進が必要とされている。同会議においては、通常の学級に在籍する障害のある児童生徒へのより効果的な支援施策の在り方について、校内支援体制や通級による指導の充実、特別支援学校の専門性を生かした取り組みなどを中心に検討が進められてきた。

 これまでの議論の内容を踏まえた報告素案では、▽特別支援教育に関する校内支援体制の充実▽通級による指導の充実▽高校における通級による指導の充実▽特別支援学校の専門性を生かした取り組み━━についてまとめられており、前回会議の議論を経て修正が加えられたところを中心に、委員らが意見を述べた。

 野口晃菜委員(UNIVA理事)からは「特別支援教育に関する校内支援体制の充実」においての校内委員会の在り方として、「すぐに個別の支援や別の場での支援を検討するのではなく、まず多様な子供がいることを前提にして通常の学級全体でできる工夫を実施する。その上で、通常の学級の中でできる個別的な支援をする。その上で、通級など別の場を検討するという段階が必要ではないか。まず個別的な支援を検討するのではなく、学級全体に対してできる支援を検討してほしい旨を記載してほしい」と要望した。

 また、「通級による指導の充実」についても、「通級による指導の成果は、通常の学級における環境調整などがあってこそ出るものだ。それがないと、どんなに通級で障害に応じた特別な指導をしても、通常の学級では成果は出ない」と述べ、通級の担当教員と担任との連携について記載を求めた。

 奥住秀之副座長(東京学芸大学教育学部特別支援科学講座教授・学長補佐)は「特別支援学校の専門性を生かした取り組み」において、障害のある子も含めて多様な子供が共に学び合えるような学校システムのモデル事業化について書き込まれている点を評価した上で、「当面はモデル事業ということだが、現行法令の中で進めていって成果が出たとすれば、どんどんそれを他の地域でも応用していくことにもつながる。モデル事業の期限を決めた上で、成果をつくっていくべきではないか」と述べた。

 小枝達也委員(国立研究開発法人国立成育医療研究センター副院長、こころの診療部統括部長)からは「良い報告書ができるのではないかという期待がある。ただ、これだけのものをやるとなると、学校現場は大変だと思う。教員が研修やスキルアップしやすくなるような体制を国として整えていく、あるいは各自治体に働き掛けていくといったことも書き加えるべきではないか」との指摘があり、他の委員からも同様の意見が出された。

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