深刻な教員不足を背景に、これまで自治体独自の少人数学級を推進してきた山口県、沖縄県などで、少人数学級を維持するだけの教員の確保が難しくなり、見直しを行っていることが、2月16日までに分かった。臨時的任用教員の減少や、特別支援学級の増加などが背景にあるとみられ、両県の担当者は教員の確保に追われている。
139の公立中学校がある山口県では、教員不足を理由に、2023年度の中2・中3の1学級の生徒数の上限を35人から38人に増やす。中1については35人のままで、小学校についても変更はない。各学校には2月13日以降、順次通知されている。
同県では03年度から中2・中3の1学級の生徒数の上限を独自に35人としていたが、各学校への聞き取りなどにより教員数が不足することが分かり、23年度は38人に引き上げることを決めた。同県教委義務教育課の担当者は「教科の未履修を防ぐことを最優先した、苦渋の決断だ。38人という人数も何度もシミュレーションした上で決定した」と苦しい胸の内を明かす。
同県の23年度採用試験の中学校の志願者は274人で、倍率は2.6倍だった。教員不足の最大の要因として、担当者は「正規採用者は確保しているが、臨時的任用教員が激減している」と話す。教員免許更新制の廃止により、失効したり休眠状態になったりしていた教員免許状の保持者にも声を掛けたりしたものの、教員不足の解消にはつながっていないという。
24年度以降については、現状では未定としており、担当者は「とにかく教員の魅力を伝え、教員になりたい人を増やすしかない。できる対策は細かいものも含めて取り組んできているが、例えば、さらなる臨時的な免許状の発行についても検討するなど、追加の対策を考えて実施していく」と強調した。
同じく、これまで独自の少人数学級を進めてきた沖縄県でも、教員不足を背景に、小中学校の一部の学年で国の基準に戻すことを検討している。同県は21年度以降、小1・小2で1学級30人、小3~中3で同35人としてきたが、教員が確保できない場合には国の基準に戻し、小5~中3で40人を上限とする可能性も想定している。
同県教委学校人事課の担当者によれば、同県の教員不足の背景には「近年、特別支援学級の増加により、必要な学級数が採用者に対して多くなっている」という状況がある。学校基本調査によれば、同県の特別支援学級の児童生徒数(22年度)は小学校6550人、中学校2488人で、それぞれ前年度より約1割増加している。
独自の少人数学級を国の基準に戻すことについて、担当者は「4月の担任未配置は防がなければならず、さまざまな事態に備えて準備している」と説明する。同県教委は同時に、教員免許状を持っているが現在、教職に就いていない人を対象とするセミナーの開催や、退職教員への呼び掛けを行っているといい、「一人でも多くの人材を掘り起こすため、現在、必死に取り組んでいる」と状況を明かす。さらに、来年度から教員採用選考の受験年齢上限を45歳から59歳に引き上げるなど、制度の見直しも進めている。
国は25年度までに、小学校の全学年で35人学級を段階的に整備することとしており、来年度は4年生の学級編制の標準を、現行の40人から35人に引き下げる予定。