東京都渋谷区の小中一貫校・区立渋谷本町学園(斉藤茂好統括校長、児童生徒842人)でこのほど、中学2年生を対象に「まちづくり」をテーマとした探究学習の発表会が行われた。渋谷区独自の地域学習「シブヤ科」の一環として取り組んだもので、生徒たちはこれまで「総合的な学習の時間」を活用し、20時間をかけてグループの発表を準備。建築や地域振興の専門家がファシリテーターとして支援を行った。
発表会の当日、視聴覚室に集まった生徒たちは、グループごとに地域の課題と、それに向けた解決策をプレゼン。生徒たちは手元の端末を操作しながら、スクリーンを使って「思い切り球技ができる場所が少ないので、専用の施設を作る」「お祭りで出るごみの散乱を減らすため、夕方にごみ拾いイベントを開催する」「公園の遊具にQRコードを貼り、読み取るとミッションが現れる」など、さまざまなアイデアを披露した。
プレゼンの際、生徒たちはデータを使った説得力のある説明や、寸劇や動画、イメージ画像などを駆使して、聞き手に伝わる工夫を凝らした。「地域にスポーツカフェを作る」という提案をしたグループの生徒は「韓国での雑踏事故の後、ワールドカップで渋谷のスクランブル交差点に人が集まっているのを見て、人が集まる場所を分散できないかと考えた」と、アイデアの出発点を語った。発表の時には「できるだけスライドの文字数を減らし、伝えたいキーワードだけを書いた。あとは口頭で説明するように心掛けた」という。
今回、指導にあたった同校の渡辺菜津子主幹教諭は「ゴールのない学びなので、当初は戸惑いもあった。それでも、最後にプレゼンをすることが決まり、グループのアイデアが決まると、そこから逆算して、アイデアを説得する根拠として何が必要かを考えられるようになった。とりわけファシリテーターの方が、実際のまちづくりの事例を示してくれたことが、生徒たちの想像力を刺激したようだ」と語った。
渡辺主幹教諭はまた「生徒たちはパワーポイントの操作には慣れているが、一方でアニメーションに凝り過ぎると説明がおざなりになる、話が長すぎると聞き手が疲れてしまう、ということも、お互いの発表の機会を通して経験している。今回の発表では、伝え方がすごく上手になったと感じた」と、生徒たちの発表を振り返った。