深刻な教員不足のため、山口県や沖縄県が自治体独自の少人数学級の取り組みを見直そうとしていることについて、永岡桂子文科相は2月17日の閣議後会見で、「令和5(2023)年度の暫定的な措置として検討していると承知している」とした上で、「国の基準を下回る人数で学級を編制する前提と聞いており、国における35人学級の計画的な整備に必ずしも反するものではない」と述べた。山口県や沖縄県による見直しの動きは来年度の暫定措置であり、義務標準法が定める学級編制の基準に沿った内容との見方を示した。
永岡文科相は、山口県や沖縄県から文科省の担当者が聞き取った内容として、「山口県においては、中学2、3年生の35人学級を38人学級に変更。沖縄県においては、国の標準を一部の学年で下回る県の基準に関し、やむを得ない場合に限り、国の基準の範囲内で個別の学級を編制する方向で検討している」と説明した。
こうした両県の取り組みについて、「いずれの場合においても、国の基準を下回る人数で学級を編制するという前提と聞いている。国における35人学級の計画的な整備に必ずしも反するものではないと理解している」との見方を明らかにした。
学級編制を定めた義務標準法(公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律)には、小学校全学年の「35人学級」を定めた21年3月の法改正で、21年度から5年間かけて、2年生から6年生まで学年進行で段階的に小学校の学級編制の標準を35人に引き下げる道筋が盛り込まれている。これに沿って、23年度は小学4年生の学級編制の標準が現行の40人から35人に引き下げられる。これにより、23年度現在の学級編制の標準は、小学1年生から4年生までが35人で、小学5年生から中学3年生までが40人となる。
山口県の見直しは、03年度から中学2、3年の1学級の生徒数の上限を独自に35人としてきた少人数学級の取り組みについて、各学校への聞き取りなどから教員数が不足することが分かったため、23年度は38人に引き上げることを決めたもの。義務標準法に定める中学校の学級編制の標準は40人なので、見直し後も、この法定の基準は下回っている。
沖縄県は、独自の少人数学級の取り組みとして21年度以降、1学級の生徒数の上限を小学1、2年生で30人、小学3年生から中学3年生で同35人としてきたが、教育新聞の取材に対して、教員が確保できない場合には義務標準法が定める学級編制の標準に戻し、小学5年生から中学3年生で1学級の生徒数を最大40人とする可能性も想定しながら、新年度の準備を進めていることを明らかにしている。
こうした教員不足への対応について、永岡文科相は、この日の閣議後会見で、「昨年9月に行った(都道府県・政令市との)教育長会議において、積極的な正規教員の採用や教師の確保に向けた取り組みの強化をお願いしている。国としては小学校における35人学級の計画的な整備や高学年の教科担任制の推進など、中長期的な見通しを持った計画的な採用に資するよう、今後とも教職員の定数改善に取り組むとともに、教師不足に対しても実態を把握して、しっかりと対応していきたいと考えている」と説明した。