幼保小接続期の教育の充実について議論してきた、中教審の「幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会」(座長・無藤隆白梅学園大学名誉教授)は2月27日、最終回となる第12回会合を開き、審議まとめ案「学びや生活の基盤をつくる幼児教育と小学校教育の接続について~幼保小の協働による架け橋期の教育の充実」について話し合った。5歳児から小学校1年生の2年間を「架け橋期」として焦点を当て、この期間の教育の充実を図り、生涯にわたる学びや生活の基盤を作るための方策をまとめた。
審議まとめ案では、今後推進する方策として▽架け橋期の教育の充実▽幼児教育の特性に関する社会や小学校等との認識の共有▽特別な配慮を必要とする子供や家庭への支援▽全ての子供に格差なく学びや生活の基盤を育むための支援▽教育の質を保障するために必要な体制など▽教育の質を保障するために必要な調査研究など――の6点が挙げられた。
具体的な内容としては、期待する子供像や育みたい資質・能力、園で展開される活動や小学校の生活科を中心とした各教科等の単元構成などを明確化した「架け橋期のカリキュラム」を幼保小の協働で作成すること、幼保小の合同会議など対話の機会を確保すること、遊びを通して学ぶという幼児期の特性に関する認識を小学校や社会全体で共有することなどが盛り込まれた。
会合ではまた、審議まとめ案へのパブリック・コメント募集の結果、「架け橋プログラムについては、多忙な現場の実態と乖離(かいり)している」「幼児期から学齢期への接続を重視するなら、小学校1、2年生の時期は35人より少ない人数で学級編制すべき」「タブレットやICTの扱いに早くから慣れるよりも、実体験、五感で感じる暮らしの保障が必要」などといった意見が寄せられたことが報告された。
委員からは「うまく進めるには小学校側の意識改革が肝になる。校長や1年生の担任だけが取り組むのではなく、校務分掌にコーディネーターとして位置付けることが重要」「とりわけ小学校の先生たちに、この架け橋期教育の重要性について気付いてもらうことが大切。小学校の先生たちの認識が変わったような事例がもしあれば、それをアウトプットしていくことで、重要性が共有されればよい」など、小学校側の対応の重要性を指摘する意見が出された。
他にも「実際に動く人やスケジュール体制などが一番大変で、発信したら(現場が)勝手に行ってくれるものではない。もちろん現場の実践者が考えることも大事だが、責任を持って具体的に動ける仕組みを、労働環境や体制も含めて、一緒に再度考えていくなど、バランスを取ってほしい」と、現場への支援を求める声も寄せられた。
無藤座長は「文科省や自治体でも担当(部署)が分かれるわけで、さまざまなつながりの悪さがあるが、それを乗り越えてこそ今後が開かれるということを確信している。(審議まとめで)きれいな文章を作れば自然に何かが実現できるということはあり得ないので、全国の自治体で実現できるよう、具体的な手だてを次に尽くしたい」と議論を締めくくった。今回の審議まとめ案は、委員から出された意見を反映した上で、3月上旬に開かれる中教審初等中等教育分科会に報告される。