障害のある受験生に対する大学入試などでの合理的配慮を巡り、大学入試センターの南谷(みなたに)和範教授の研究室は2月28日、CBT(コンピューター使用型調査、Computer Based Testing)の活用による高度な合理的配慮の実現を考えるシンポジウムをオンラインで開いた。講演で南谷教授は、CBTの中でもCAT(コンピューター適応型テスト、Computer Adaptive Test)方式を導入することで、試験時間の延長やさまざまな障害に応じた出題が可能になるとの見解を示した。
現在、南谷教授らは「多様な受験者の高度テスト配慮を実現したCBT環境の開発と教育テスト実施改善の研究」というテーマで科学研究費補助金を受けた研究を進めており、この日のシンポジウムでは、日本におけるCBTの研究・導入状況や障害のある児童生徒へのICT活用や受験時の配慮について、研究者らが報告し、南谷教授が研究の方向性について講演を行った。
自身も視覚障害のある南谷教授は、大学入試センターがこれまで行ってきた障害のある受験生に対する合理的配慮について、事例を交えながら紹介。受験生の障害に対応するのと同時に難易度も変えない形での代替問題を作成することはとても難しく、現状の合理的配慮には限界があると解説した。
南谷教授は、CBTの活用によってより障害のある受験生に対応した合理的配慮が実現できる可能性を強調。中でも、項目反応理論(IRT)に基づき、さまざまな問題が難易度別にデータベースに登録され、受験生の解答に応じて、正解であればより難しい問題を、不正解だったらより簡単な問題をコンピューターがデータベースの中から選び出すなどして、受験生の成績を正確に測定することができるCAT型CBTに注目し、「(CAT型CBTでは)一斉同時の試験として実施する必要がなくなると考えられるので、理論上は無制限の時間延長も可能になる。障害のある受験生の時間延長をかなり柔軟にできることが期待できる」と述べた。
一方で、CBTによって動画などの多様なメディアを活用した出題が可能になることは、障害のある受験生への合理的配慮を考える上で課題があると指摘。「音声を用いる出題や写真・イラストを用いる出題、動画を用いる出題というのは、いろいろな障害のある人にとって障壁になりかねない。いろんなメディアを活用した設問に対しては、それぞれ代替問題をつくらなければならず、それはこれまで以上に一層踏み込んだものにならざるを得ない。問題作成の負担増をもたらすのではないか」と疑問を呈した。
その上で「われわれが開発したいのは『高度テスト配慮が実現したCAT型CBTシステム』だ。高度テスト配慮とは、読み書きに困難を抱える多様な受験者に対して障害状況に応じて出題する設問を自動で調整できるような仕組みだ」と、研究のゴールを説明。これによって、データベースに格納された問題に障害種別ごとの出題適否属性情報を付加し、障害のある受験生のプロファイルと照合すれば、その受験生にとって不適切な出題を避けつつ、同じ趣旨、同じ難易度の別の設問が出題できるようになると展望を語った。