命の大切さを伝える映画『有り、触れた、未来』 今月公開

命の大切さを伝える映画『有り、触れた、未来』 今月公開
3月10日から全国公開される
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 東日本大震災当時、宮城県石巻西高校の教頭だった齋藤幸男氏の『生かされて生きる-震災を語り継ぐ-』(河北選書)を原案とし、全編を宮城県で撮影した自主制作映画『有り、触れた、未来』が完成し、試写会が2月28日、都内で開かれた。試写会前に行われた山本透監督と齋藤幸男氏のトークショーで、山本監督は「東日本大震災後の傷だらけの状況からなんとか支え合いながら前に進んできた東北の方たちのエネルギーをお借りして、今苦しんでいる人たちに『大丈夫だよ』と言ってあげられるような映画をつくりたかった」と思いを述べた。

 監督・脚本は『グッモーエビアン!』『九月の恋と出会うまで』などの山本氏。コロナ禍の閉塞的な社会で自殺者や不登校児童生徒が増える中、命の大切さを伝える力強い作品をつくりたいと集まった総勢22人の若手俳優からなるプロデューサーチーム「アンチェインイレブン・アシスタント」が共に企画から資金集め、制作まで行った。同作の趣旨に賛同した桜庭ななみ氏、手塚理美氏、杉本哲太氏、仙道敦子氏、北村有起哉氏など、豪華俳優陣が出演している。

 舞台は10年前に自然災害に見舞われた海辺の町。事故で恋人を亡くした女性、30歳を過ぎてもボクシングを続けるプロボクサーとその妻、末期がんと闘う女性、将来に不安を感じながら「魂の物語」を演じる若い舞台俳優、自然災害で祖父、兄、母を亡くし、自殺願望を抱く中学生の少女とその父親など、さまざまな人生が交錯しながら、支え合い、分かち合い、何度でも立ち上がっていく姿が描かれている。

 試写会前に行われたトークショーで、この映画を撮るきっかけについて山本監督は「2020年、自分の周りで若手俳優の自殺が相次いだ。自分は何ができるのか、映画は何ができるのかと考えていた時、タイトルに引かれて齋藤さんの本を読んだ」と話した。

トークショーでの山本監督(左)と齋藤氏
トークショーでの山本監督(左)と齋藤氏

 実は映画の中には地震や津波といった言葉も映像も出てこない。山本監督は「東日本大震災を描くつもりはなかった。齋藤さんや東北の方々から、生きていくことは大変だけれども、どれだけみんなで支え合って前に進んできたかを伺い、そうした思いを込めてつくった映画だ」と説明。コロナ禍の3年を振り返りながら、「子どもも大人も、将来や未来に対して希望を持てなくなってきている。東北の人たちは、東日本大震災後の傷だらけの状況から、なんとか支え合いながら前に進んできた。そのエネルギーをお借りして、今苦しんでいる人たちに『大丈夫だよ』と言ってあげられるような映画をつくりたかった」と話した。

 東日本大震災発生時に石巻西高校教頭として避難所運営にあたり、15年に退職した後も、防災教育を切り口とした命の教育の大切さを広めるために全国の学校などをまわっている齋藤氏は「震災後の5~6年は感情のままに苦しかったこと、悲しかったことを話し歩いていた。そこから未来を生きる子どもたちに何を残せるのかを考えるように変わっていった時期に、山本監督と出会った」と話す。

 「コロナ禍を生きる子どもたちは、何かつらいことがあっても、抱き合えなかった。心の震災ともいえるのではないか。この映画は、コロナ禍を生きてきた子どもたちにも響く、時代が生んだ映画だと感じている。ぜひ多くの子どもたちや教員に見てほしい」とメッセージを送った。

 3月3日から宮城県で先行公開され、3月10日から全国30カ所以上の映画館で公開される。上映劇場は公式ホームページから確認できる。

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