通常学級の障害のある子への支援の在り方 最終報告を公表へ

通常学級の障害のある子への支援の在り方 最終報告を公表へ
最終報告素案について議論が交わされた(YouTubeで取材)
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 文科省の「通常の学級に在籍する障害のある児童生徒への支援の在り方に関する検討会議」は3月9日、最終となる第9回会合をオンラインで開いた。前回の会議で修正が加えられた報告案について議論し、今回出された意見などを受けた最終報告は、荒瀬克己座長(教職員支援機構理事長)に一任し、後日公表する予定となった。委員からは最終報告について、「この報告書が足掛かりとなり、みんなで体制づくりを推進することで、まず通常学級の先生を支えていくといったメッセージを出していけたら」「今後は、障害、不登校、ギフテッドという縦割りではなく、横断的に多様な子供たちへの支援ができるような体制や実践をつくっていかなければならない」といった意見が語られた。

 同会議においては、通常の学級に在籍する障害のある児童生徒へのより効果的な支援施策の在り方について、校内支援体制や通級による指導の充実、特別支援学校の専門性を生かした取り組みなどを中心に検討が進められてきた。これまでの議論の内容を踏まえた報告案では、▽特別支援教育に関する校内支援体制の充実▽通級による指導の充実▽高校における通級による指導の充実▽特別支援学校の専門性を生かした取り組み等――についてまとめられている。

 また、前回の報告案に対する委員からの意見を反映し、「おわりに」の最後に、今回の最終報告を実現するために国に対し、▽小中学校の通級による指導に係る教員定数の基礎定数化の着実な実施▽特別支援学校のセンター的機能の充実――を推進することにより、教職員が元気に安心して本務に集中できる環境づくりを求めることが追記された。

 同会議の最終回にあたり、委員からはこれまでを振り返り、感想や意見が述べられた。氏間和仁委員(広島大学大学院人間社会科学研究科准教授)は最終報告について評価しながらも、「子供の学びや将来に貢献する教育システムの実現を確実に進めていく必要がある。現在の特別支援教育は専門性の向上からは逆行してしまっているように感じる。質の高い教員を担保するにはどうするのか、真剣に目標を定めて進めていく必要がある」と指摘した。また、梅田真理委員(宮城学院女子大学教育学部教育学科児童教育専攻教授)は「通常の学級の教員の専門性をどう高めていくのかに課題がある。それをどこで学べばいいのか、まだまだ曖昧な部分が多いのではないか」と述べた。

 笹森洋樹委員(国立特別支援教育総合研究所発達障害教育推進センター上席総括研究員兼センター長)は、学校現場が疲弊している現状に触れながら、「この報告書が足掛かりとなって、みんなで体制づくりを推進することで、まず通常学級の先生を支えていくといったメッセージを出していけたら」と希望を述べた。

 野口晃菜委員(UNIVA理事)は「日本においては、障害種ごとの専門的な教育が発展してきた。そうした歴史からも、共に学ぶ教育と、子供一人一人のニーズに応じた専門的な教育が、二項対立になりやすかった。どちらかではなく、どうしたら両立できるかということを考えていく必要がある」と指摘。「今回の報告書で画期的なのは、インクルーシブな学校運営モデルだと思っている。通常の学級がどう変われるかということが一番のポイント。特別支援教育の知見も交わらせることで、新しい教育の形を模索することができるのではないか。そして今後は、障害、ギフテッド、不登校などという縦割りではなくて、横断的に多様な子供たちへの支援ができるような体制や実践をつくっていかなければならない」と強調した。

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