厚労省の「障害児通所支援に関する検討会」は3月14日、第11回会合をオンラインで開き、障害のある子どもの権利を重視し、障害児通所支援に携わる全ての事業所が、地域社会へのインクルージョンを推進していく観点で障害児や家族の支援に当たっていくよう求めた報告書案を大筋で了承した。報告書案では、障害児通所支援のうち、特に放課後等デイサービスで学童期・思春期の対応を充実させることを明記。メンタルヘルスの課題や不登校、就労・進学への準備など、年代に応じた必要な支援をガイドラインで示すことが打ち出された。
「すべてのこどもがともに育つ地域づくりに向けて」という副題が付けられた報告書案では、これまでの議論を踏まえ、基本的な考え方として、障害のある子どもの最善の利益の保障についての記述を大幅に追加。障害児通所支援を進める際の最優先すべき視点と位置付けた。その上で、共生社会の実現に向けて、障害の有無にかかわらず、子どもたちがさまざまな遊びなどを通じて共に過ごし、学び合い、成長していくことが重要だとし、障害児通所支援に携わる全ての事業所に対して、インクルージョン推進の観点を常に念頭を置きつつ、子どもや家族の支援に当たるよう求めた。
障害児通所支援のうち、児童発達支援センターについては、子どもや保護者の意向に基づいて、個別的な支援を通じて保育所や学校が障害児を受け入れる力を付けていく保育所等訪問支援や、保育所・学校全体にインクルージョンが推進されるための環境をつくれるように働き掛け、障害児の受け入れを実現していくスーパーバイズ・コンサルテーションによって、障害児の育ちの支援に協力するとともに、保育所などの障害児への支援力を向上させながら、並行通園や保育所などへの移行を推進していくことが重要だとした。
放課後等デイサービスについては、学童期・思春期の行動上の課題やその行動の意味に着目したアセスメントを行い、子どもが安心して過ごせるための環境調整や、自発的なコミュニケーションスキル、遊びのスキルなどを身に付ける支援がより重要であること、個別支援計画と個別の教育支援計画を連携させるなど、学校側の生活を把握しながらここに合わせた一貫した支援を提供していく必要があることを明記。思春期のメンタルヘルスの課題や就労・進学への準備などに対応するため、それぞれの年代に必要な支援内容をガイドラインで提示することを求めた。
また、学校に在籍しているものの、精神的な理由などで継続的に学校に通えない子どもにとっては、休息でき、安心・安全でその子らしく過ごせる場としての放課後等デイサービスの役割は大きいと指摘。学校や医療機関などと連携しながら支援していく必要性を強調した。
この日の会合では、構成員から報告書案の文言の内容確認や意見があり、具体的な修正は田村和宏座長(立命館大学産業社会学部教授)に一任した上で、内容について大筋で了承した。報告書を受けての具体的な施策については、4月に発足するこども家庭庁に引き継がれることになる。
最後に田村座長は「障害児通所支援は、就学前は体制的にできているところもあり、あるいは学校卒業後の大人の世界でも相談を中心とした仕組みがあるが、学齢期が揺れている。障害のある子どもだけに限らないと思うが、今の教育が求めている子どもたちの姿に対して、子どもたちが、そのことと自分の要求とのずれをどうしたらいいか分からないということがあるのではないか」と指摘。「学齢期の発達支援、家族支援、本人の大人になりゆく力を育てていく支援に関する議論をもっと深めていく必要がある。職員の配置基準を現実的に見直すことも課題になってもいいのかなとも思ったが、今回はライフステージをまたがった話だったので、そこまで議論は深められなかった。統一的な事業ごとのガイドラインをつくっていくときにまた、そうした議論をしていただけるといいのかなと思う」と述べ、今後も継続的に議論を積み重ねていくことに期待を寄せた。