文科省は3月14日、学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議の第3回会合をオンラインで開き、政府が目標に掲げている2050年のカーボンニュートラル達成に向け、下部組織の「学校施設の脱炭素化に関するワーキンググループ(WG)」がまとめた報告書案が示された。報告書案では、公立小中学校施設の約4割が築40年以上経過して老巧化しており、省エネルギー性能が低く、既存学校施設のカーボンニュートラル達成に向けた取り組みが必要だと結論付けた。報告書は最終的な文言を調整した上で、近く公表される。
報告書案の名称は「2050年カーボンニュートラルの実現に資する学校施設のZEB化の推進について」。ZEBとは、「Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の略称で、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建築物を意味する。学校施設のZEB化を推進することで、エネルギー消費量の削減以外にも、快適性・生産性の向上や、環境教育への活用、防災機能の強化、光熱費の削減などのメリットがあるとされている。
報告書案では、まず公共施設の約4割が教育施設であり、学校施設において率先した取り組みが必要だと現状の課題を整理した。また、公立小中学校施設の約4割が築40年以上経過して老巧化しており、省エネルギー性能が低く、既存学校施設のZEB化の取り組みが必要だとした。
その上で、学校施設におけるZEB化を実現するために、4つの地域(北海道、山形、東京、沖縄)において既存学校施設のZEB化シミュレーションを実施するとした。また、学校施設の新増築においては、積極的により上位のZEB基準を満たすようにし、改修においても費用対効果が高い取り組みから段階的・計画的にZEB化を図るよう示している。こうした取り組みに向けて、国に財政支援の充実などを求めた。
審議の末、報告書案は荒瀬克己主査(教職員支援機構理事長)の一任となり、最終調整の上、近日中に公表される。
続いて、今年1月に新たに設置された「学校施設の質的改善・向上に関するワーキンググループ(WG)」から、ウェルビーイングに向けた学校施設づくりのアイデア集の作成について進捗(しんちょく)が報告され、委員らが意見を交わした。これまでの議論では、アイデア集に掲載する事例については、学校全体を学びの場とした事例や、1人1台端末の導入により活発になってきているオープンスペースの活用事例などが挙げられている。
市川裕二委員(東京都立あきる野学園校長)は、「オープンスペースが全ての子にとっていいとは限らない。例えば、発達障害の子で、周りの音が入ってくることによって不適合を起こす場合もある。もう少し狭い空間で一人になれるような場所が、その子にとってはほっとする場だったりする。さまざまな障害のある子供たちの視点も入れてもらえるとありがたい」と要望した。
また、高橋純委員(東京学芸大学教育学部教授)は「特にこの1年、GIGAスクール構想で1人1台端末の活用がうまくいっている学校は、まったく形の違う授業が展開されるようになっている。そういう学校では、オープンスペースについても、こう使えばいいんだということが分かってきている」と指摘。「デジタルによって学習経過がリアルタイムで把握できることで、オープンスペースのような空間が生きはじめている。個別最適な学びや協働的な学びが、校舎としての空間とデジタルの融合で今、起こり始めている。そういったことを検討していくと面白いのではないか」と話した。