第12期を迎えた中教審は3月15日、第135回総会を開き、新会長に教職員支援機構理事長の荒瀬克己氏を選出した。また、副会長には筑波大学長の永田恭介氏と、住友生命保険相互会社取締役会長の橋本雅博氏が選ばれた。この日の総会では、第11期の審議状況と第12期の審議事項について整理され、荒瀬会長は「第11期で出された答申の実現が問われている。未来を見据えながら、同時に現在の教育現場の声にしっかり耳を傾け、丁寧に考える姿勢を大切にしていきたい」と決意を述べた。
この日の中教審総会は、委員の任期切れに伴い、新たに任命された委員10人を含む第12期中教審委員29人による初回の会合として開催された。会議の冒頭、簗和生文科副大臣は「少子化や人口減少、地球規模の課題、格差の固定化などの社会課題が存在しており、将来にわたって持続可能な社会をつくっていく上で、教育の果たす役割がますます重要になっていく。個別最適な学びと協働的な学びの一体的充実に向けた学校教育や、そのための環境整備の在り方など、今後2年間にわたって積極的な議論をお願いしたい」とあいさつした。
また、荒瀬会長は「第11期においてさまざまな審議に加わり、教育の担う役割の重要性と期待を改めて認識した。次期教育振興基本計画のコンセプトの柱の一つとして、日本社会に根差したウェルビーイングの向上がある。誰一人取り残されることなく、全ての人が予測困難な時代を生き抜くために必要な力を身に付け、それぞれが幸福に豊かに生きていく。そしてその基本を教育が支えていて、今後も支え続けるのだということを強く感じている」と述べ、「教育政策を通して、教育へのリスペクトが確かなものになるよう、委員の皆さまと誠実に議論していきたい」とした。
第11期においては、「『令和の日本型学校教育』を担う教師の養成・採用・研修等の在り方」や、「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~」、来年度からの「次期教育振興基本計画」など、今後の教育政策の方向性を定める重要な答申が出されてきた。第12期について荒瀬会長は「今期はそれらの答申の実現が問われることとなる。10年先、20年先の未来を見据えながら、同時に現在の教育現場の声にしっかり耳を傾け、当事者に寄り添い、丁寧に考える姿勢を大切にしていきたい」と述べ、実効性のある取り組みの実施に向けて議論を深めていくとしている。
具体的には、初等中等教育分科会では、「個別最適な学びと協働的な学びの一体的充実に向けた学校教育やそのための環境整備の在り方」「教師の養成・採用・研修の一体的改革に向けた取り組み」を中心に検討を進めていく。
生涯学習分科会においては、社会教育人材の活躍促進に向けた方策や、リカレント教育の推進、地域と学校の連携・協働の推進、国際的な動向への対応を中心に、今後の生涯教育・社会教育の振興方策について検討していく。また、大学分科会においては、急速な少子化の進行などへの高等教育の対応方策、大学院制度と教育の在り方、法科大学院などの教育の改善・充実について、審議を行っていくとしている。
第12期から新しく任命された秋田喜代美委員(学習院大学文学部教授、東京大学名誉教授)は「第12期はウィズコロナからポストコロナになり、これまでの教育からの分岐点になるだろう。単なる紙の答申として終わるのではなく、全国100万人の教員やこれから教員になる人たちに具体化していくことが重要だ」と意気込みを語った。
また、同じく今期から任命された戸ヶ﨑勤委員(埼玉県戸田市教育委員会教育長)は「GIGAスクール構想や個別最適な学びと協働的な学びの一体化、働き方改革において、学校間や自治体間において格差があることを危惧している」と指摘。「学校単位では素晴らしい取り組みが存在しているのに、同じ自治体間においても共有されていない。点の取り組みをいかに線の取り組みにしていくのかが重要ではないか。事例集だけではただの広報にすぎない。今後は格差が生じてしまう要因を分析していく必要がある」と強調した。
【会長】
荒瀬克己(あらせ・かつみ) 京都教育大卒。1978年、京都市立伏見工業高校教諭。同市教育委員会指導主事、同市立堀川高校校長、大谷大学文学部教授などを経て、2020年に関西国際大学学長補佐・基盤教育機構教授、21年から現職。同年1月には中教審初等中等教育分科会長・特別部会長として「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(答申)」の取りまとめに当たった。69歳。
【副会長】
永田恭介(ながた・きょうすけ) 東京大卒。1981年、アルバート・アインシュタイン医科大学リサーチアソシエートに着任。筑波大学教授、同学学長特別補佐を経て、2013年から現職。69歳。
橋本雅博(はしもと・まさひろ) 東京大卒。1979年、住友生命保険相互会社入社。同社広報部長、勤労部長などを経て、2014年に同社代表取締役社長 社長執行役員、21年から現職。67歳。