あなたの家にも、「名もなき家事」から生まれた妖怪がいませんか?――。子どもたちに家族と気持ちよく生活するためにできることを考えてもらおうと、埼玉県朝霞市立朝霞第六小学校(田邊雅也校長、児童994人)で3月13日、「名もなき家事」を妖怪に例えた絵本『いえのなかのぼやき妖怪ずかん』(ポプラ社)を教材にした授業が行われた。子どもたちはカードに描かれたユニークな妖怪たちについて、誰がその家事を担っているかを話し合いながら、自分で気付いて行動することの大切さを感じていた。
授業は同小3年1組の学級活動の時間に行われた。最初に担任の松永ひとみ教諭が子どもたちに「家事って聞いたことある?」と質問。子どもたちから「洗濯」「料理」「掃除」などの回答が出ると、すかさず松永教諭は絵本を電子黒板に映し出し、誰かがやらなければいけないけれどやってもらえなかった「名もなき家事」がたくさんあり、絵本ではそれらの一つ一つを「ぼやき妖怪」として図鑑にしていることを説明。服が脱ぎ捨てたままになっている「フクヌギッパ」やトイレットペーパーの芯がそのまま交換されずに残されている「ペーパーカラカラ」など、思わず「いるいる」とうなずいてしまうようなかわいらしい妖怪を紹介しながら、子どもたちの興味を引き付けた。
次に、子どもたちはグループに分かれ、「ぼやき妖怪」が書かれたカードを見ながら、その「名もなき家事」を誰がやっているか話し合いながら分類。さまざまな「名もなき家事」が存在し、家族の誰かがその家事をやってくれていることに気付いていた。
授業を受けた女子児童は「気付いてもらえない妖怪の気持ちが分かって、ちょっとかわいそうだと思った。『カミノケツマール』(風呂の排水溝に詰まった髪の毛の妖怪)は初めて知った。そういう家事はまだできないけれど、『クツシタマルマル』(丸まったまま洗濯されがちな靴下の妖怪)ならば、私にもできるかな」と感想を話していた。
松永教諭は「絵本では家族に対する気付きを持ってほしいというコンセプトがあったので、そこをクローズアップしつつ、学校生活にも生かしてほしいと考えた。先生や誰かから言われると、『やらされ感』が出てしまうが、自分から気付いて動けるようになれば、押し付けではなくなり、習慣化もしやすい。妖怪に例えることで、楽しく感じることができるのではないか」と、授業の狙いを説明した。