宇宙をテーマにした探究学習に力を入れている広域通信制高校のクラーク記念国際高校は3月17日、都内で記者会見を開き、宇宙探究部の生徒らが開発に携わってきた人工衛星が完成したと発表した。人工衛星は秋ごろに国際宇宙ステーション(ISS)に向けて打ち上げを行い、冬以降に運用を開始する予定で、運用も生徒が主体となって行われる。
創立30周年を記念して同高では宇宙教育プロジェクトを立ち上げ、2021年に部活動の宇宙探究部による小型人工衛星の開発に着手。世界初の1キログラム衛星「CubeSat」の打ち上げに成功した中須賀真一東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻教授が指導に当たり、1年半という短期間で、重さ約0.94㌔、10㌢四方の小型人工衛星「Clark sat-1」を完成させた。今後、人工衛星は宇宙航空研究開発機構(JAXA)に引き渡され、秋には宇宙ビジネスを手掛けるSpace BDによる打ち上げが行われる。並行して同高クラークネクスト東京キャンパスには管制局が設置され、アマチュア無線従事者免許を取得した宇宙探究部の生徒が、人工衛星の運用を行うという。
宇宙探究部で衛星開発のメンバーとして活動し、運用にも参加する予定の同高2年生の山根充輝さんは「今回のプロジェクトは通常の衛星開発よりも速いペースで進んでいったので、衛星や宇宙について学びながらミッションを決めていくことが大変だった。今日ようやく『Clark sat-1』をお披露目できたのがうれしい。私たちは約1年半にわたり中須賀教授をはじめ、さまざまな方の特別授業を聞いて、宇宙について学んできた。その中で特に心に残っているのは、『何回もやり直すのは間違いではない』というトライアンドエラーの考え方や、問題解決の連続が衛星開発や宇宙開発であるということだ。これから『Clark sat-1』の運用に向けてさらに勉強していきたい」と力を込める。
打ち上げ後のミッションについて、同高の成田康介クラークネクスト東京キャンパス長は、ISSからの放出成功というミニマムサクセス、衛星との通信成功というフルサクセス、衛星に搭載したカメラで地球環境の撮影をしたり、搭載した音声やイラストデータを衛星から受信したりするエクストラサクセスの3段階が想定されていると説明。「宇宙探究部の生徒たちの話し合いを通じてもう一つ挑戦したいことが出てきたため、さらに『エクストリームサクセス』という段階を設けた。生徒が宇宙や衛星について勉強してきた中で、彼らが一番興味を持ったのが宇宙の環境問題だった。スペースデブリや宇宙ゴミの問題は広く知られているが、実際にどういうゴミなのか、スペースデブリを見たことがある人は少ないのではないかということで、スペースデブリの撮影にもチャレンジしたい。非常に難易度が高いと言われているが、可能性はゼロではない」と強調。
同高の宇宙教育プロジェクトのアンバサダーを務める宇宙飛行士の山崎直子さんは「高校生のうちから本物に触れることは、宇宙を目指したい人はもちろんのこと、どの分野に進もうとも、高校生で宇宙に挑戦したという、世界的に見てもとてもアンビシャスな挑戦をチームでやり遂げた成果は、今後の財産になると思う」と、生徒らの背中を押した。