教員志望の学生の意識を独自調査 採用試験早期化に賛否

教員志望の学生の意識を独自調査 採用試験早期化に賛否
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 教員採用試験の早期化・複線化について、教員志望の学生の賛否は分かれていることが、教育新聞が実施した意識調査で浮かび上がってきた。3月に実施した今回の調査では、文科省や都道府県・政令市が進めている教員採用試験に関する施策についての評価を聞いた。山形県が打ち出したような、初任者の負担軽減や支援についてはほとんどの学生が支持しており、教員の人材確保のために必要な施策でも、働き方改革や処遇改善と並び、初任者の負担軽減・支援の充実を求める声が目立った。

 調査は、教育新聞を読んでおり、教職課程を履修している大学生・大学院生らに、3月10~16日にインターネットで実施。61人が回答を寄せた。学年別では、2023年度に大学4年生になる人が最も多く、70.5%を占めている。回答者数は少ないものの学生が教育新聞を購読する大きな理由には教員採用試験対策があり、回答者は教員志望度が高い傾向にあると考えられる。実際に、卒業後に教職に就くことを「希望している」と答えたのは78.7%を占めており、教員採用試験を80.3%が「必ず受験するつもりだ」と回答していた。

 昨年10月に、文科省と都道府県・政令市教委などで構成される「教員採用選考試験の在り方に関する関係協議会」の初会合では、教員採用試験の早期化について、文科省が①現行よりも1~2カ月程度早め、5月ごろに1次試験を行った後に教育実習を実施し、7月に2次試験を行った上で、8~9月に合格発表②現行よりも 3カ月早め、1次試験を4月に行い、5~6月にかけて教育実習を実施した上で2次試験を行い、7~8月に合格発表――の2案を提示している。

 これについて尋ねると、「とてもよいと思う」「どちらかと言えばよいと思う」を合計した割合は、①では37.7%、②では39.3%だった。「どちらかと言えばよくないと思う」と「とてもよくないと思う」の合計は、①が42.6%、②が44.3%で、否定的な見方がやや高いものの、賛否はほぼ拮抗(きっこう)していた(=グラフ①)。

 

 現在、いくつかの自治体から発表されている教員採用試験に関する変更点についても質問した。

 東京都などが今年実施の教員採用試験から導入する、大学3年生でも一次の筆記試験などを受験できるようにする取り組みについて、「あなたが大学3年生だったら、受験してみようと思うか」と尋ねたところ、過半数の50.8%が「思う」と回答。自由記述に寄せられた理由を見ると「チャンスが2回に増えるから」や「一度、経験して雰囲気や問題のレベルを体験してみたいから」「受かれば4年生で少し楽になれるから」など、受験機会が増えることや試験対策の負担の分散などをメリットに挙げる声があった。

 さらに、大学の推薦を受けた3年生について、書類選考の上で一次試験を免除し、個人面接、模擬授業、論文による二次試験を行い、学業成績を加味して3年生のうちに内定を出す横浜市などが打ち出した取り組みについて聞くと、「とてもよいと思う」と「どちらかと言えばよいと思う」の合計は47.5%と半数近くを占めたが、「とてもよくないと思う」と「どちらかと言えばよくないと思う」の合計も34.5%あった。理由としては「大学の成績が良くても教育者としていいとは限らないと思う」「早期に進路を決定したいと思う」などがあり、評価が分かれた(=グラフ②)。

 

 その一方で、山形県が来年度から小学校で実施することとしている、4月から採用された新任の教員は原則として単独で学級担任を持たず、教科担任兼学級副担任とするか、受け持つ場合には「新採教員支援員」 を入れるといった取り組みは、「とてもよいと思う」が78.7%、「どちらかと言えばよいと思う」が21.3%で、回答者のほとんどが好意的に捉えていることが分かる。

 教員の人材確保のために必要な施策を複数回答で聞いた質問でも、「初任者の負担軽減・支援の充実」(78.7%)は、「学校の働き方改革の促進」(93.4%)や「教員の処遇改善」(83.6%)に次いで、3番目に高かった(=表)。

 

 教育新聞では今回の意識調査の結果をさらに精査・分析し、近日中に詳報を公表する。

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