不登校児童生徒の学びの場となる教育支援センターの整備に向け、九都県市首脳会議の神谷俊一千葉市長は3月30日、文科省で簗和生文科副大臣と面会し、教育支援センターで不登校児童生徒の支援を行う教員を教職員定数の基礎定数に位置付けて安定的な配置を図ることや、教育支援センターの設置に必要な場所の確保と環境整備にかかる費用について、国が十分な財政措置を行うことなどを要望した。面会後、神谷市長は「不登校の児童生徒はどこの学校にもどこの自治体にも必ずいるのに、直接対象にした予算は限られている。不登校の児童生徒がいることを前提に、人員と予算をしっかり確保してほしい」と述べ、国に対応を求めた。
要望書によると、不登校児童生徒への支援について九都県市首脳会議でほぼ1年間をかけて共同研究したところ、昨年6月に文科省の不登校に関する調査研究協力者会議の報告書で、今後重点的に実施すべきとされた施策のうち、「校内教育支援センター(別室登校)」と「教育支援センター」について、▽十分な数の教職員が配置されていないため、安定的、継続的に支援することができない▽場所の確保や整備ができず、これらのセンターを開設、拡充することができない--との課題があることが分かった。
こうした課題を解決するため、国に対して、①教育支援センターで不登校児童生徒の支援を行う教員について、教職員定数の基礎定数に位置付け、安定的な配置に向けて必要な措置を講じる②上記の基礎定数化が実現するまでの当面の措置として、校内教育支援センターと教育支援センターの人員確保に向け、加配定数の拡充や、国庫補助における財政支援を現在の3分の1から2分の1に引き上げるなど、国の予算を増額する③校内教育支援センターと教育支援センターの設置に必要な場所の確保や環境整備にかかる費用について、国が十分な財政措置を行う④不登校児童生徒の多様な学びの機会を支援するため、各自治体が柔軟に対応できるよう、自由度の高い交付金を新たに設ける--ことを求めた。
面会後、取材に応じた神谷市長は「差し迫っているのは、教育支援センターの場所。特に都市部では空き教室のない学校もある。人員の確保については、まず補助制度を拡充してほしい。中期的には、いま教職員定数の加配定数で対応しているものを基礎定数化して、安定的に不登校対策に教職員を充てられるようにしてほしい」と述べ、不登校児童生徒の学びの場として教育支援センターを整備するためには、教職員とインフラの両面で対応が必要になっていることを強調した。
さらに「いまの予算の組み方は、全体の枠の中で『不登校対策に充ててもいいですよ』みたいな形になっていて、不登校児童生徒を直接対象にした予算はすごく限られている。不登校児童生徒はどこの学校でもどこの市でもどこの県でも必ずいて、本当にどんどん増えている。九都県市首脳会議の研究会で1年間検討して、不登校児童生徒がどこにでもいることを前提に、人と場所を確保していかなければならない、これは国に求めることだろうとの結論になった」と続け、不登校対策を直接対象にした国の予算確保が必要になっているとの認識を示した。
また、学校設置者である政令市が独自の教員加配などを通じて自治体の判断で不登校対策を強化することはできないのかと聞いたところ、神谷市長は「私は教育は国家の根幹だと思う。自治体は事実上、単独で増税をできないので、財源は限られている。例えば、学校給食の無償化とか、子供の医療費などは(自治体が単独で行う)単費で対応しているが、不登校は国家的な問題だと思う。そうした根幹に関わる部分については『ぜひ国費で対応してほしい』と言い続けなければいけない。不登校の問題は本当に広がっていて、自治体の実情に応じて対応する部分があるにせよ、どこの地域でも基本的にある問題としてぜひ捉えてほしい」と述べ、不登校児童生徒への対応は学校教育の根幹に関わるのだから国費による対応が必要だとの考えを説明した。
九都県市首脳会議は、首都圏の神奈川県、埼玉県、千葉県、東京都の知事と、横浜市、川崎市、千葉市、さいたま市、相模原市という5つの政令市の市長で構成されている。