定員内不合格は障害以外にも? 実態把握求め当事者が会見

定員内不合格は障害以外にも? 実態把握求め当事者が会見
高校の定員内不合格の問題を訴える雑賀貴子さんと娘の美佳さん(左)
【協賛企画】
広 告

 受験した高校が定員割れであるにもかかわらず、不合格となってしまう定員内不合格を巡り、今年の高校入試でも定員内不合格とされた障害のある雑賀美佳さんと母親の貴子さんが3月30日、文科省で記者会見を開き、この問題を訴えた。定員内不合格は昨年、文科省が公立高校について初めての実態調査を行い、全国で少なくとも延べ1631人が定員内不合格となっていることが分かっている。貴子さんは改めて、文科省に対して通知を都道府県教育委員会に出すなどして、定員内不合格をしないように強く働き掛けることや、定員内不合格が起きるのは受験生に障害がある場合以外も考えられるとして、どういった受験生が定員内不合格とされているかなど、さらに詳しい実態把握に踏み込むよう求めた。

 千葉県浦安市に住む美佳さんは、車椅子で移動し、医療的ケアを必要とするなど、重度の障害があるが、小、中学校は地元の公立校に在籍していた。高校も地域の公立校に行くことを希望し、4年前に自宅近くの千葉県立浦安南高校を受験。前期試験は不合格、後期試験と2次募集は定員内不合格となり、それ以来毎年、高校受験に挑み続けている。今年行われた高校入試でも、美佳さんは同高を受験したが、一般募集では定員160人に対して53人が受験し、美佳さんを含め2人が不合格。2次募集でも定員109人に12人しか受験しなかったにもかかわらず、美佳さんは不合格とされた。

 この日の記者会見で貴子さんは、定員内不合格の問題点を①教職員の配置は定員確保を前提とした予算措置であるにもかかわらず、定員に空きがあるのに不合格としている上に、一部の県ではその情報が公開すらされていない②定員内不合格を原則として出さないとしている都道府県もある一方で、多くの定員内不合格を出している都道府県もあり、住んでいる地域で教育を受ける権利に格差が生じている③定員内不合格の理由を学校や教育委員会は「総合的判断」としか説明しておらず、受験生の学ぶ権利を奪っているにもかかわらず、説明責任を果たしていない――の3点があると説明。

 高校の定員内不合格の事例の中には、貧困など障害のある受験生以外も含まれている可能性があるとも指摘し、「今の日本の高校教育は選ばれた人しか学べない場所になっている。声を上げにくい立場の弱い人も定員内不合格になっている可能性があるにもかかわらず、その理由は明らかにされないままだ。『総合的判断』には、差別や排除、区分が介入する余地が残り、極めて不明瞭だ。定員内不合格は高校教育を受けるに足る能力のある者のみが進学を許されるという、いわゆる『適格者主義』が色濃く残る問題だ」と批判した。

 その上で文科省に対し、定員内不合格を原則として出さないよう、都道府県教育委員会に通知することに加え、どういった受験生が定員内不合格になっているのか、詳細な実態把握を行う必要があると提言した。

 美佳さんの付き添いで記者会見に出席した千葉県の高校教員は「個人的には美佳さんのような子が高校に入ってきてほしい。教員も生徒も美佳さんから学べることがある。これは大きなチャンスだ。当事者が学び、成長することも大事だが、生徒が大人になれば、いろいろな人がいる社会の中で生活するという視点が、高校や行政に果たしてあるのだろうか。一番大変な状況にある子が生きやすい社会は、みんなが生きやすい社会だ。この子(美佳さん)を排除するような場では、きっと他の子も息苦しさを感じているはずだ。そのことをわれわれ教員が当事者から学ばなければ」と、高校現場の意識改革を求めた。

広 告
広 告