全国各地の学校で新年度の始業式を迎える中、教員の声を基に学校現場の課題解決に向けた発信に取り組む「School Voice Project」(SVP)は4月6日、オンラインで記者会見を開き、2022年度、23年度に、公立学校で新年度が始まる4月1日から始業式を迎えるまでの日数が4日以下だった自治体が、学校管理規則上では半数以上に上ることが分かったと発表した。SVPの武田緑理事は「学校改革では賛否の分かれるテーマもあるが、これに関してはかなりの教職員が一致して長くしてほしいと思っているし、学校管理規則の変更は比較的他の改革と比べて容易で予算もかからない。変更コストに対して、変えた際のポジティブな効果が大きいのではないか」と話し、自治体の教育委員会に対して見直しを呼び掛けた。
SVPは昨年6~8月上旬にかけて、全国の1788自治体のうち、1756自治体の新年度の準備期間を調査。その結果、始業日などを定めている学校管理規則上で、22年度、23年度の新年度の準備期間が4日以下となる自治体は56%(976自治体)に上った。
各都道府県の市区町村における新年度準備期間の平均を見ると、最短で2日間から最長で8日間まで、ばらつきが大きいことも見てとれる。
記者会見に参加した公立小学校の教諭は「3日や4日の準備では子どもたちを迎える最低限の環境整備しかできない。後回しにしていい書類は全て始業式後、子どもたちが下校してからの業務になる。これによって最も圧迫されるのは授業準備の時間だ。十分な授業準備の時間が確保できないことで、分かりやすい授業ができなかったり、子どもたちの興味を引き付けることができなかったり、分からない子に時間を取って教える時間がない。特に勉強の苦手な子に手を差し伸べられない無念さをいつも味わっている」と、授業の質や子どもへの影響を懸念する。
同じく、東京都内の公立小学校の教諭は、経験が少なく、この時期に研修も入りやすい初任者や若手教員の負担が大きいと指摘。「本来、この時期に同僚の先生との関係性や学年、学校としてどう進んでいきたいのかというチームビルディングをしっかり行う必要があるが、そこが今はとても慌ただしくなっていて、新任の先生にとって心理的安全ではない状態になっている。初任や若手の先生にとって、周りの学年の先生も忙しく、自分は何をしたらいいか分からない状況だ。見通しを持たせてあげることと、何かあったら頼れる関係性をつくれる準備期間が必要だ」と強調した。
今回の調査について武田理事は「教職員自身も他自治体が何日に始まるかを知らない。変える余地があるんだということを教職員に向けて可視化したかった。学校改革では賛否の分かれるテーマもあるが、これに関してはかなりの教職員が一致して長くしてほしいと思っているし、学校管理規則の変更は比較的他の改革と比べて容易で予算もかからない。変更コストに対して、変えた際のポジティブな効果が大きいのではないか」と問題提起。
「カレンダーに左右されずに準備期間を5日間は確保しようと思うと、学校管理規則上の始業日を『4月7日』もしくは『土日を除く5日間』という書き方にすれば確保できる。それくらいの日程であれば、授業時数の確保の問題も比較的クリアしやすいのではないか」と提案した。