成年年齢引き下げから1年 今後の消費者教育に向けシンポ

成年年齢引き下げから1年 今後の消費者教育に向けシンポ
高校生や大学生も交えて行われた効果的な消費者教育を議論するパネルディスカッション(Zoomで取材)
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 改正民法の施行による成年年齢の18歳への引き下げが実施されてから1年が経過したのに合わせ、日本弁護士連合会は4月7日、消費者教育に取り組む教員や団体を交えて、これからの消費者教育の在り方を考えるシンポジウムを開いた。「若者に向けた効果的な消費者教育」をテーマにしたパネルディスカッションでは、高校生や大学生が参加し、若者が主体的に参加できる消費者教育の授業を提案した。

 成年年齢の引き下げにより、18歳になれば保護者の同意がなくても契約ができるようになり、未成年の場合に保護者の同意がない契約を取り消すことのできる「未成年者取消権」が適用されなくなることから、高校3年生の時点でさまざまな消費者トラブルに巻き込まれてしまうことが懸念されている。

 この日のシンポジウムでは、国民生活センターから若年層の消費者トラブルの傾向についてや、消費者庁の山地あつ子消費者教育推進課課長による消費者教育の取り組み状況について報告があった後、高校現場の実践として、文科省消費者教育アドバイザーを務める池垣陽子埼玉県立蓮田松韻高校教諭が同校での授業実践を紹介した。

 池垣教諭は高校現場の感覚として「成年となり消費者トラブルが急増したという話は耳にしていないが、わざわざ学校に話をしていないだけかもしれない。行事や集会のたびに18歳で成年、イコール大人となり、責任が伴うと強調している。しかし、成年となっても高校生であることに変わりはなく、高校卒業後の学費を保護者が負担することが一般的ということもあり、進路指導や問題行動への対応も今まで通りで、保護者抜きで話を進めることはない。18歳の誕生日を迎えたら成年になるという法律上の線引きと実際の学校や社会の現実に矛盾があるため、生徒も保護者も教職員も18歳で成年となることに対し実感を持てていない」と指摘。

 「そもそも消費者教育とは、被害にあわないだけでなく、合理的意思決定ができる消費者、社会の一員として、よりよい市場とよりよい社会の発展のために積極的に関与する消費者を育成する教育だ。自立した消費者となるには、被害防止の啓発だけでは不十分だ」として、公民科と連携し、主権者教育の視点と消費者教育の視点を融合させたワークショップの取り組みや、埼玉県の職員を講師に、実際に世の中に出回っている不当表示広告を調査する授業などを解説した。

 後半のパネルディスカッションでは高校生や大学生も登壇し、当事者の視点から消費者教育の課題を議論。高校生のころに授業で見た映像教材が古く、リアリティーがなかったと指摘した大学生からは、それを逆手に取って「授業の中で、自分たちで動画を作成してもらう。最初にさっき見ていたような古い動画を見せて、これよりも面白く作ってという指示を出したら、自分たちで主体的に調べ学習したり、だます側の心理を考えたりするので、動画をつくって他の人に見てもらうのがいいのではないか」といった提案があった。

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