新潟県上越市の上越教育大学附属中学校(杉本知之校長、生徒325人)の2年生は、同市の高田城址公園の観桜会に合わせて、4月1日と2日の両日、高田本町商店街と連携した「桜プロジェクト」を実施した。商店街を紹介するフリーペーパーを作成して配布したり、商店街の商品の販売や体験会をしたりして、多くの人でにぎわった。生徒らは「自分たちの企画を通して、地域の人や家族に地元の良さを伝えたり、観光客と商店街をつなげたりできた」と達成感を語った。
同校の2年生は昨年度の1年間を通して、高田本町商店街との地域連携の学びを深めてきた。商店街の人たちにヒアリングを重ねたところ、高田城址公園の観桜会は毎年40万人以上の観光客でにぎわうが、訪れた人たちが商店街に立ち寄ることが少なく、商店街の活性化に結び付けられていないという課題が持ち上がった。
そこで生徒たちは自分たちが観光客と地域をつなぐ役割を担いたいと、高田城址公園の観桜会時に同校の校舎やグラウンドを活用し、商店街の商品の販売や体験会を行う「桜プロジェクト」を企画。商店街や地域の人々と意見交換をしながら計画を進め、クラウドファンディングも実施して130万円を超える資金を集めた。
こうした資金を基に、4月1日と2日の両日は、同校のグラウンドや屋上を会場に、生徒たちが取材して制作した高田本町の商店を紹介するフリーペーパーを配布したり、生徒が考えた商店のあわあめやみそを使ったポップコーンや、みそ玉を使ったみそ汁などを販売したりした。また、染め物体験やアクセサリー作りなどの体験コーナーも実施。同校の屋上を開放して屋上から桜を眺められるようにしたり、記念撮影ができたりするよう、着物姿の生徒が案内するなど「附属中らしいおもてなし」を考え、実行した。
当日、地元商店のみそ屋のみそ玉を使って、みそ汁を販売した青野悠佑さんは、「2日間で500食、完売した。これまでいろんな人と関わって何かを成し遂げる経験がなかったので、このプロジェクトがうまく成功するのか心配だったが、自分の中では大成功だったと思う。自分たちの企画を通して、地域の人や家族に高田本町の良さを伝えられ、つなげられたことがうれしい」と声を弾ませる。
約1年に及んだ長期プロジェクトだったが、青野さんは「企画を進める上で高田本町に何度も通った。通っているうちに、商店街を歩いている人などにも『企画、頑張ってね』と声を掛けてもらったり、商店の人に『こういう企画が普段ないからうれしい』と言われたりして、自分たちも本気で活動していこうと思った」と振り返る。
また、フリーペーパーの制作を担当した阿部真帆さんは、「24㌻を6人で作り上げていった。ページ数が多かったので、統一感を出すのに苦労した」と話す。「最終チェックが終わって冊子として出来上がった時の達成感は忘れられない。お店の人に見せた時に、ものすごく喜んでもらえたのもうれしかった」と笑顔を見せた。
1年間授業を担当し、生徒たちをサポートしてきた同校の仙田健一教諭は、「1年かけてプロジェクトを進めていったので、生徒たちのコミュニケーション力が高まり、外部の人との関係もどんどん良くなっていた」と生徒の成長に目を細める。当日、多くの保護者も訪れ、「こんなに声を出しているわが子を初めて見た」と子供たちの姿に感心する人も多かったそうだ。
仙田教諭は「地域の人々も最初はこうしたプロジェクトが実現できるのか半信半疑だったと思う。しかし、生徒たちのアイデア力や、クラウドファンディングで資金を集める姿を見て、本当に驚いていた」と話す。本年度については、「もっと自分たちのアイデアを具体化していくようなことや、学校の外に出て地元の良さを発信していくようなことにチャレンジしていきたい」と抱負を語った。