武蔵野大学(東京都江東区、西本照真学長)は2024年4月に、世界で初めてとなる「ウェルビーイング学部」を開設する。それに先立ち、学部長に就任予定の慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の前野隆司教授らによる記者発表会が4月12日、同学有明キャンパスとオンラインのハイブリッドで行われた。前野教授は「ウェルビーイングは産業革命以来の社会のゆがみを刷新するカギになる。社会のウェルビーイングを高めていけるような人材を育てていきたい」と抱負を述べた。
同学に24年度から新設されるのは「ウェルビーイング学部 ウェルビーイング学科」。入学定員は80人の予定で、2年次編入学定員は10人を予定している。専任教員は学部長に就任予定の前野教授や、ウェルビーイング経営に関するコンサルティングなどを行うYeeY代表取締役の島田由香氏など16人。設置場所は武蔵野大学武蔵野キャンパス(東京都西東京市)。同学部では、ウェルビーイングについての社会学・心理学的知見や、新たに創造的なデザインを行うための工学的手法・デザイン学的手法を学びながら、ウェルビーイング学やポジティブ心理学などを得意とする海外研究者との連携や海外への短期留学、また日本各地での自然体験や地域課題解決実習など、実践にも重きを置いていくとしている。
学部長に就任予定の前野教授によると、「大学における『ウェルビーイング学部』というのは、世界初」だという。前野教授はウェルビーイングの概念について、「身体・精神・社会といったあらゆる面において良好な状態、すなわち幸福であることを表す概念で、身体が良好な状態にあるだけでなく、精神的にも社会的にも満たされていること」と説明。同学部においては、「まずウェルビーイングについての知識を学んでもらうことになる。例えば、格差の小さい社会は幸せ、幸せな人は視野が広い、孤独は幸福度を下げる、幸せな人は創造性・生産性・チャレンジ精神が高いなど、すでに多くの研究結果が出ている」と話した。
カリキュラムについて、「座学だけでなく、実地体験を重視している。アントレプレナーシップについても徹底的に学ぶ」と話し、「ウェルビーイングは産業革命以来の社会のゆがみを刷新するカギだと思っている。学生個人のウェルビーイングを高めながら、社会のウェルビーイングを高めていけるような人材を育てていきたい」と強調した。
その後は同学の西本照真学長と、前野教授、鈴木寛東京大学教授・慶應義塾大学教授、島田氏のトークセッションが行われた。会場からは同学部卒業時のイメージや、想定される就職先についての質問が上がり、前野教授は卒業時のイメージについて、「ウェルビーイングを理解していることはもちろん、自ら新しいアイデアを出し、それを実装するところまで学びながら体験することになる。社会を変えていく人になっているのではないか」と説明した。
また、鈴木教授は就職先について「今、チーフウェルビーイングオフィサー(CWO)を置いている企業が急増している。そういった部署ということも考えられるのではないか」と指摘。島田氏も「今、CWOとはどういう仕事なのか、CWOの教育をしてほしいというニーズも増えている」と話し、「この学部で4年間学ぶことで、今は存在していない、よりクリエーティブな新しい仕事をつくっていくこともできるのではないか」と展望を述べた。
西本学長は「この学部を検討する高校生に伝えるならば、ウェルビーイングデザイナーになろうということ。世界や企業、自分自身のウェルビーイングをデザインしていく力を卒業までに身に付けていく学部ということだ」と締めくくった。