【給特法】廃止は検討対象か? 文科相「方向性決まっていない」

【給特法】廃止は検討対象か? 文科相「方向性決まっていない」
国会内での記者会見で質疑に応じる永岡文科相
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 文科省の調査研究会が取りまとめた教員の給与や学校における働き方改革の論点整理について、永岡桂子文科相は4月14日の閣議後会見で、「論点整理においては、教員の意欲や能力の向上に資する給与体制、勤務体制の在り方など、非常に重要な論点が盛り込まれている」と評価した。一方、給特法の廃止が検討対象として論点整理に明記されなかったことについては「仮に時間外勤務手当を支給することとした場合の、さまざまな留意すべき観点について記載がなされている」と説明し、教職調整額として月給を4%上乗せする代わりに時間外勤務手当を支給しないとする、給特法の骨格部分の改廃についても論点になるとの見方を示した。ただ、給特法の廃止そのものが議論の対象になるかどうかは「具体的な方向性について現時点で決まっていることはない」として直接の言及を避けた。今後のスケジュールについては、5月までに公表する教員勤務実態調査の速報値と調査研究会による論点整理を基に「中教審における検討に速やかに着手したい」と述べた。

 永岡文科相は、調査研究会が取りまとめた論点整理について、「例えば、国、都道府県、市町村、各学校など多くの主体が関わることを踏まえた、教員の給与や勤務制度、さらなる働き方改革、教職員定数、支援スタッフなどの一体的で総合的な検討の必要性。教員の職務や勤務の実態を踏まえ、意欲や能力の向上に資する給与体制、勤務体制の在り方。いずれも非常に重要な論点であり、文科省としても、しっかりと受け止めて検討を進める必要があると考えている」と、重要性を強調した。

 続いて、論点整理の中に給特法の廃止を明示した箇所がないことを指摘し、「今後の議論で給特法の廃止は検討対象にならないのか」との質問に対し、永岡文科相はまず、「調査研究会は情報収集とか論点整理を目的とするものであり、何らかの結論を得るものではない。教員勤務実態調査の速報値公表後の円滑な検討に資するように、給特法を含む給与、労働法制、公務員法制の在り方などについて論点整理が取りまとめられた」と、今回の論点整理の目的を説明した。

 その上で「論点整理においては、仮に時間外勤務手当を支給することとした場合の、さまざまな留意すべき観点について記載がなされていると承知している。給特法の在り方に関する今後の検討の具体的な方向性について現時点で決まっていることはないが、教員勤務実態調査の速報値の公表後、調査研究会において整理された論点を基に、教員の処遇を定めた給特法等の法制的な枠組みを含めて、中教審での検討に速やかに着手したいと考えている」と述べた。

 教員に時間外勤務手当を支給する場合に留意すべき観点を論点整理に記載することによって、今後の中教審での議論では、教職調整額として月給を4%上乗せする代わりに時間外勤務手当を支給しないとする給特法の枠組みの抜本的な見直しが検討対象になることを示唆したものとみられる。給特法の廃止そのものが今後の議論の検討対象になるかどうかについては、直接の言及を避けた。

 文科省の調査研究会が4月13日に取りまとめた論点整理では、給特法による教職調整額の枠組みを見直して「仮に、時間外勤務手当を支給することとした場合」として、「個別具体の職務について、学校管理職が学校において時間外勤務として承認することが実務上できるのかどうか」「時間外勤務を行う際に学校ごとにいわゆる『三六協定』の締結を要することとなれば、学校管理職の大きな負担となり得ることをどう考えるか」「都道府県が給与負担者である県費負担教職員制度の中で、服務監督権者である市町村教育委員会に時間外勤務を削減するインセンティブが民間企業の場合と同様に機能するかどうか」「市町村教育委員会の時間外勤務に関する考え方の差異によって、給与面での差が生じる可能性をどう考えるか」といったことを留意が必要な観点として挙げている。一方で、給特法の廃止については一言も触れられていない。

 給特法の廃止を巡っては、学校の働き方改革を巡る中教審答申の取りまとめに当たった小川正人放送大名誉教授が2022年12月14日、自民党の令和の教育人材確保に関する特命委員会のヒアリングに応じ、選択肢を整理している。小川氏は「給特法の廃止による時間外勤務手当化」の長所やメリットとして▽勤務時間管理を労使で合意し可視化できる▽時間外勤務の長短などに対し時間外勤務手当でメリハリをつけられる▽割増賃金を支払わせることで時間外勤務を抑制する機能がある--などを挙げた。一方、論点や課題には▽時間外勤務の実態に見合った時間外勤務手当の財源をどう確保するか▽給与予算の性格上、時間外勤務手当の財源はあらかじめ一定基準で措置されるが、その基準を超える時間外勤務が発生した場合、誰がどう負担するか。服務監督権者の市町村が負担するのか▽給特法の制定根拠とされてきた教職の「特殊性」の議論をどう整理するか▽三六協定と学校の労務管理の在り方--などとした

 また、インターネットで署名活動を行ってきた「給特法のこれからを考える有志の会」は3月16日、給特法の廃止を含む抜本的な見直しを求めて文科省に8万345筆のオンライン署名と要望書を提出。要望書では、「給特法の見直しとそれに伴う業務改善の要望」として▽労働基準法を適用し、他の地方公務員一般職と同じルールに▽残業を労働と認め、使用者側に厳格な労働時間管理を義務付ける▽残業代の支給▽時間外労働の罰則付き上限規制▽休憩時間の確保を使用者側の責任に▽持ち帰り仕事も使用者側の責任に▽勤務間インターバル制度の導入▽部活動の地域移行▽「学校依存社会」からの脱却▽授業準備時間の確保――を求めている。

 ただ、22年12月から4回にわたって開催された文科省の調査研究会では、高度な専門職としての教員の働き方について深い議論を求める意見が多く、給特法の廃止につながる意見はあまり聞かれなかった。

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