精神疾患のある親と暮らす子 教員向けに研修動画を制作

精神疾患のある親と暮らす子 教員向けに研修動画を制作
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 親が精神疾患を抱えている子どものことを知ってもらおうと、蔭山正子大阪大学教授らの研究グループが教員向けの研修動画「私ここプログラム」を制作した。実際の当事者のエピソードを紹介しながら、そうした子どもが置かれている状況や気持ちを理解し、どうしたら教師が気付き、適切な支援につなげることができるかを解説している。動画はYouTubeで公開しているほか、4月17日からDVDの無償提供も始めた。

 精神疾患を抱えている親と暮らしている子どもは、日本国内では正確な統計がないものの、オーストラリアやカナダでは15~23%というデータがあり、少なくとも7人に1人程度はいると考えられる。精神疾患のある親と生活していた経験のある人を対象とした「精神疾患の親をもつ子どもの会(こどもぴあ)」の活動でアンケートを取ったところ、子ども時代に家で大人同士のけんかが絶えなかったり、不安を感じていたりした人が半数以上いることが確認できたという。さらには、家事や親の情緒的ケアなどを担うヤングケアラーだった人も多かった。

 そのような状況下でも、子どもは教員など周囲の大人に気付かれないように振る舞っていることも多く、こどもぴあの参加者アンケートからも、小学生の頃は9割以上、中学生の頃は8割以上の人が教員に相談しなかったと答えている。子ども本人も生まれたときから親に精神疾患があったため、それが普通のことだと思い込んでいて困っている自覚がなかったり、困っていても言語化するのが難しかったりする場合もあり、子ども自身が声を上げにくいという。

 小中学校の教員を対象にした研修動画では、当事者の声も紹介しながら、こうした精神疾患を抱えている親がいる子どもが置かれている状況を解説するとともに、どうしたら教師が、そうした子どもの存在に気付けるかをアドバイス。普段の教育活動の中で「親が保護者面談や授業参観に来ない」「勉強に集中できない」「遅刻や欠席が多い」「保健室によく行く」などのサインが出ていたら、親の影響の可能性を考えること、声を掛けたり、話し相手になったりすることで、解決を急ぐのではなく、気にしている意思を示し、寄り添う支援の重要性を強調している。

精神疾患を抱えた親と暮らす子どもの状況を説明した動画(「私ここプログラム」のYouTube動画より)

 蔭山教授は「親が精神疾患の場合は、世間の偏見もあり、より一層相談しにくくなっている。まずは、大人が精神疾患の正しい知識を持ち、偏見をなくすことが重要だ。また、気になる子どもがいたときに、家庭の事情があるのかもしれないという見方をしてもらうことで、支援の必要な子どもの存在に気付ける。学校の先生方には、動画を視聴していただき、精神疾患を正しく理解していただくとともに、子どもの生活を想像できるようになってもらいたい」と呼び掛ける。

 その上で「校内で一人で抱えることなく、相談しながら粘り強く対応してもらいたい。学校の研修会などで動画を視聴した後に、グループワークを行うなどして、学校の組織としての対応を検討してもらえたら、今後の対策に生きると思う。こうした子どもに対して、何か特別なことをしなければいけないと身構える必要はない。子どもの力を信じて寄り添うという、日頃、先生方が行っていることと同じことを子どもは求めている」と話している。

 動画はYouTubeで公開しているほか、4月17日以降、学校の研修目的で活用する場合には、無料でDVDを郵送する。学校名などを明記の上でメール=watashikoko.program@gmail.comを送ると、申込方法が案内される。

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