子育て家庭の外出機会が増えるゴールデンウィークや夏休みを前に、政府は4月18日、妊婦やこども連れの優先窓口を社会教育施設などに設ける「こどもファスト・トラック」の全国展開に向けた関係府省会議を開いた。「こどもファスト・トラック」はすでに一部の国の施設で先行的に導入されており、政府は今後も積極的に増やしていくとともに、地方自治体や民間にも広げていくことを目指している。
岸田文雄首相の掲げる異次元の少子化対策のたたき台として、小倉将信こども政策担当相が3月末に取りまとめた「こども・子育て政策の強化について(試案)」では、こども・子育てに優しい社会づくりのための意識改革として、「こどもファスト・トラック」の展開が盛り込まれている。この日の関係府省会議では、各府省から「こどもファスト・トラック」について、既存の取り組みや先行的に実施した事例、今後の拡大方針などが共有され、子育て当事者への周知について意見交換が行われた。
例えば、環境省が所管する新宿御苑(ぎょえん)では、例年、桜が見頃を迎える3月下旬から4月上旬にかけて、混雑日の入場を事前予約制としているが、今年は「こどもファスト・トラック」を設けて、こども連れの場合は予約がなくても入場できるようにしたところ、多い日で約3000人が利用したという。
また、国立の文化施設を所管する文科省は3月26日のキッズデー開催に合わせて、東京国立博物館でこども連れを対象にしたチケット売り場への優先案内や専用レーンの設置、券売機・窓口の一部を「こども連れ専用窓口」とするなどの運用を行った。同省ではこの試行を踏まえて、ゴールデンウィーク中は国立科学博物館や国立アイヌ民族博物館などでも同様の取り組みを予定している。公立や私立の博物館、劇場、プロスポーツイベントなどにも広がるよう、関係団体への働き掛けを行っていく方針。
「こどもファスト・トラック」は今後、空港での手続きや公共サービスの窓口などでも導入・拡大される見通し。
各府省からの報告を受け、小倉担当相は「こども家庭庁としても、こどもや子育て当事者の声をよく聞き、各省庁や地方自治体、民間業者と連携して『こどもファスト・トラック』の取り組みを進めていきたい。こういった取り組みはプロダクトアウトではなく、マーケットインである必要がある。そういう意味では、どれが対応しやすいかではなく、こどもや子育て当事者が何をしたいかを前提に、こどもや子育て当事者が行きたいところを優先的に、『こどもファスト・トラック』を進めるように心掛けていただきたい。そのためには現場の声や当事者の声を大切にしていただきたい」と、今後の取り組みの方向性を指示した。