【全国学力調査】英語で初のオンライン実施 学習過程問う出題も

【全国学力調査】英語で初のオンライン実施 学習過程問う出題も
全国学力・学習状況調査で、英語の「話すこと」調査に臨む生徒たち(代表撮影)
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 今年度の全国学力・学習状況調査が4月18日、全国の小学6年生と中学3年生、およそ205万人を対象に実施された。今年度の調査では国語、算数・数学に加え、中学校で4年ぶり、2回目となる英語が実施され、4技能を測る問題が出された。そのうち「話すこと」調査は、教科に関する調査としては初めて、1人1台端末を用いたオンライン方式で実施。また児童生徒質問紙調査は、およそ80万人がオンライン方式で回答した。教科調査では、「主体的・対話的で深い学び」を実現する学習過程や、日常生活での問題解決の視点などが問われる出題が見られた。児童生徒質問紙調査では、英語の取り組み状況や部活動への参加状況、自己肯定感や規範意識、ウェルビーイングなどに関連した項目が盛り込まれた。

小学校国語で初出題「複数の文章を読み、考えをまとめる」

 参加学校数は4月7日時点で、国公私立合わせて2万8656校(後日実施を含む)。参加率は国公立がそれぞれ100%、私立が40.4%だった。英語の「聞くこと」「読むこと」「書くこと」の各調査は18日に紙ベースの調査で行われたが、1人1台端末をインターネットに接続して行う「話すこと」調査は学校のネットワーク環境を考慮し、実施日を分散。18日におよそ500校が、5月26日までに、残りのおよそ9000校が実施する。

 国立教育政策研究所(国研)の担当者によれば、今回の教科調査では「児童生徒が自ら考え、対話しながら問題を解決したり、学習活動を自ら振り返り意味付けたりするなど、『主体的・対話的で深い学び』の実現に向けた学習過程の改善のメッセージとなるような観点」「日常生活の場面などにおいて問題を解決したり、考察したりする観点」などを意識した出題がなされた。

 小学校の国語では、運動と健康に関する複数の文章を読んで理解したことに基づき、自分の考えをまとめることができるかどうかを見る、「読むこと」の領域での「考えの形成」に関する指導事項を初めて取り上げた。算数では、厚さの異なる3種類のファイル23人分を教室の棚に並べる場面が設定され、日常生活と算数を結び付けて考える問題が出された。

複数の資料を読んで考えをまとめる、小学校国語の問題
複数の資料を読んで考えをまとめる、小学校国語の問題

 中学校の国語では、読書指導の改善・充実が図られたことを受け、本の読み方についての2つの文章を読んだ上で、自分の知識や経験に触れながら、これからどのように本を読んでいきたいかを書く問題を出題。また数学では、学習指導要領で統計的内容が充実されたことを踏まえ、高校から中学校に移行した指導事項「箱ひげ図」を用いて、イチョウの葉が黄色に変わる時期が以前より遅くなっていることを、データから読み取る問題が出題された。

 中学校の英語では、ロボットについて書かれた英文を読み、書き手の意見に対する自分の考えとその理由を書く問題が出題された。学習指導要領で複数の領域を統合した言語活動を充実することが重視されていることを踏まえ、「読むこと」「書くこと」を組み合わせたもので、「前回(2019年度)の調査で、『書かれた内容に対して、自分の考えを示すことができるよう、話の内容や書き手の意見などを捉える』ということに指導上の課題が見られたことから出題した」(国研)という。

 国研の担当者は教育委員会や学校に対し「教育政策、あるいは学習指導上の課題といったものを把握・分析し、児童生徒の実態を考慮しながら、教員による指導方法の改善や、児童生徒の学習改善、学習意欲の向上などに向けた取り組みを、組織的・継続的に進めていただければ」と語った。

英語の教科調査実施に合わせ、学習状況も調査

 質問紙調査では、毎年度調査している基本的な生活習慣に関する項目に加え、4年ぶりに英語の教科調査が実施されたことから、英語に関する児童生徒の学習状況、学校での取り組み状況を尋ねた。また、主体的・対話的で深い学びや、個別最適な学び・協働的な学びの観点からの授業改善の取り組み状況、児童生徒の自己肯定感や規範意識、部活動への参加状況、ウェルビーイング、ICT機器の活用状況といった項目も盛り込んだ。

 児童生徒質問紙調査は今回、小学生およそ60万人、中学生およそ20万人がオンライン方式で回答した。文科省の「全国的な学力調査のCBT化検討ワーキンググループ」が21年に出した最終まとめでは、24年度に児童生徒質問紙調査を全面的にオンライン化し、25年度以降に教科調査のCBT(Computer Based Testing:コンピューター使用型調査)化を中学校から進める方向性を示しており、文科省の担当者は「取りまとめられた方向性に従って今、技術的、専門的な検討を進めているところ。25年度にどの教科をCBT化するのか、何年度に教科調査を全面的にCBT化するのかといった点は検討中」としている。

 永岡桂子文科相は同日の閣議後会見で、同調査の結果の利活用について「これまでの教育政策の改善、充実に生かしてきた。国では学習指導要領の改訂の際に、本調査によって把握した課題などをエビデンスとして活用しているし、教育委員会では、本調査の問題と、データを活用した、教員研修を実施するなどしている。また学校においても本調査を通じて、一人一人の児童生徒のつまずきや、学校全体としての課題を把握し、日々の教育指導の改善充実につなげていただいている」と説明。「本調査の結果を活用し、教育に関する継続的な検証と改善、そのサイクルの確立に努めたい」と期待を込めた。

 今回の調査問題・正答例・解説資料(中学校英語「話すこと」以外)は、国立教育政策研究所のウェブサイトで確認できる。

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