子育てを巡る課題に取り組む団体などで構成される「子どもと家族のための緊急提言プロジェクト」は4月18日、全ての子ども・子育て家庭の包括的な支援に向けた集会を衆議院第一議員会館で開いた。当時、こども家庭庁の創設を決めた菅義偉前首相も登壇し、与野党の議員や賛同団体の代表者が、政府が打ち出した次元の異なる少子化対策の課題や財源確保の重要性を訴えた。
同プロジェクトでは、全ての親子と妊産婦を孤立から守るユニバーサルな支援の実現を目指し、妊娠から出産、産後ケア、保育・教育などの支援の原則無償化、妊娠初期からの専門家による伴走型支援の実現、全ての子ども・家庭に保育サービスの利用を保障することなどを提言。そのために必要な財源確保を呼び掛けている。
この日の集会の開催趣旨について、子どもの貧困問題に取り組んでいる「あすのば」の理事を務める末冨芳日本大学文理学部教授は「(少子化が深刻になり、日本は子育てがしにくい社会だと言われる中で)何をすればいいのかということをずっと考え向き合い、行動してきた。それが何かというと、誰よりも子どもたちのための『こどもまんなか政策』をしっかり打ち立て、そのための財源をしっかりと国につくっていただき、全ての子どもたち、子育てする家族、これからの未来に子どもを産み育てたいという若者を応援する社会をつくることだ。しかし、この財源という扉はとても重たく、冷たく、開かないものだった。何度押しても開かなかったが、その扉が今、少しずつ開こうとしている」と説明し、こども家庭庁の発足や少子化対策などの政府の動きに期待を寄せた。
基調講演を行った菅前首相は、待機児童問題や不妊治療の保険適用に向けた取り組みなどの、これまでの取り組みを振り返りながら、少子化対策が喫緊の課題になっているとの認識を示し、「夫婦が共に働き、共に子育てする。そうしたことが可能になるように、働き方改革を思い切って進めていくことが重要だ。その他にも、児童手当の拡充や高等教育の無償化の拡充などの経済的な支援も極めて重要だ。また、子ども・子育て家庭の住宅に優先的に入居できる仕組みなどの住宅対策も必要だ。先般、政府においては子ども・子育て政策の強化に向けた試案が公表された。まさに親の働き方やライフスタイルに関係なく、全ての子どもを対象に妊娠・出産・子育てに至るまで切れ目なく必要な支援が的確に提供される総合的な制度体系を構築しなければいけないと思う」と強調した。
集会には与野党の議員のほか、賛同団体の代表者らも出席。少子化対策の財源確保の在り方や教育費のさらなる負担軽減などを指摘する声があがった。