子供の安全・安心な放課後の居場所と、放課後の多様な学びを提供し、保護者の多様な働き方を支援する(一社)民間学童保育協会の設立シンポジウムが4月20日、都内の会場とオンラインのハイブリッドで開催された。「小1の壁」をテーマに講演した一橋大学大学院の高久玲音(れお)准教授は「子供の小学校入学により、母親の就労率が顕著に低下している。小1の壁は対策する必要性が高い社会課題だ」と強調した。
会の冒頭、小倉将信こども政策担当相が「小1の壁を打破することが喫緊の課題だと感じている。放課後の子供の居場所づくりを推進していく」とビデオメッセージを寄せた。同協会の調査によれば、全国平均で少なくとも12.8%の保護者が民間学童保育施設を利用しており、遠藤奈央子設立代表理事は「民間学童保育施設がないと仕事を続けることができないという保護者もおり、もはや社会インフラになっている。業界全体として国や地方自治体、小学校、地域との連携を図りながら、学童全体の品質向上や社会課題を未然に防ぐ取り組み、より子育てしやすい社会をつくるための活動に取り組んでいく」とあいさつした。
続いて、高久准教授が「小1の壁 2023年問題」をテーマに講演。高久准教授は、『国民生活基礎調査』(厚労省)などの複数の統計データで「子供の小学校入学により、母親の就労率が低下する」という現象が確認できていると報告。「小1の壁というのは、一部の母親が言っている問題ではないことが明らかで、対策する必要性が高い社会課題だと捉えている」と述べた。
また、保育を利用している1~2歳児が12年は33.0%だったのが、20年には50.4%まで上昇しており、こうした傾向からも今後、学童保育を利用する児童が増加すると指摘。さらに「消費生活に関するパネル調査」において、「長子の小学校入学により、母親の就労率が10.5%低下」「正規社員より、非正規社員で就労調整が大きい」「非正規・核家族世帯の就労率が特に低下している」といったデータも紹介した。
高久准教授は「小1の壁」が生まれる2つの要因を指摘。まず、量的な要因として「保育園利用者数と比較して学童の定員が少ない」ことを挙げた。それを裏付けるものとして、21年度に保育園などに通っていた5歳児は約51万人だったが、22年度に公設の学童保育を利用できた小学1年生は約44万人だった。
もう一つの質的な要因として、「例えば、学童の運営時間が短くて働き方に合わない、児童1人当たりの職員数が少ない、魅力的なプログラムがないなど、学童の質が低いためにあえて公設の学童を利用しないという層も多いのではないか」と分析。「保育や学童の場合は、多様なサービスが提供されることが重要だ。ユーザーのニーズに応える点ではまだまだ足りておらず、拡充していく余地は大きい。その点で民間学童保育施設に期待している」と述べた。
同協会は今後、▽保護者に向けた民間学童保育施設の情報提供▽業界共通の課題や新たな社会課題に対応した運営者や運営スタッフへの教育研修▽子育てや小1の壁問題、放課後の学びに関する調査研究▽国および地方公共団体に対する政策提言▽学童保育を通じた社会貢献の推進ーーといった活動を予定している。