新型コロナウイルスのパンデミックによって、子供への予防接種が大切だと考える人の割合が日本を含む多くの国で低下している――。ユニセフ(国連児童基金)はこのほど、子供へのワクチン接種の取り組みに関する課題をまとめた『世界子供白書2023』を発表した。白書では、2019~21年にかけてワクチンの定期接種を受け損ねた子供は6700万人に上るとし、子供への予防接種に優先的に資金を投入するよう、各国政府などに呼び掛けている。
『世界子供白書』は1980年から発行しているユニセフの基幹報告書で、今年は子供への予防接種の取り組みを特集した。それによると、19~21年の間に予防接種を受けられなかった子供のうち、4800万人は定期予防接種を一度も受けておらず、112カ国で接種率が低下していたと報告。はしかやポリオなどの感染拡大につながっている可能性があることや、母親の学歴、地域などが、子供の予防接種率に影響を与えていることを指摘した。
さらに、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院が行っている予防接種信頼度調査を基に、55カ国中52カ国で、ワクチンは子供にとって大切だと考えている人の割合が、新型コロナウイルスのパンデミックによって低下していたと指摘。ワクチンは子供にとって大切だという認識を示す人の割合が変わらないか増加したのは、中国、インド、メキシコの3カ国にとどまった一方、低下した国の中でも日本や韓国、パプアニューギニア、ガーナ、セネガルでは、30%以上低下するなど特に顕著だった。
子供へのワクチン接種の信頼度が低下した背景として白書では、新型コロナウイルスへの対応による医療設備のひっ迫や医療従事者の不足、新型コロナウイルスへの感染リスクから、予防接種を延期した家庭が多かったことに加え、誤解を招く情報へのアクセスの増加、専門家に対する信頼の低下、政治的分断の広がりなど、複数の要因によってワクチン接種をためらう傾向が高まっていると警鐘を鳴らしている。
こうした状況を踏まえ、白書では各国政府に対し、コロナ禍で予防接種を受けられなかった子供を早急に特定し、予防接種を受けさせること、コロナ禍のような状況下でも弾力的に対応できる保健・医療体制を構築すること、予防接種などの事業に優先的に資金を投入することなどを提言している。