教材費や給食費などの家庭からの集金業務を口座振替にすることで、子どもが現金を持参する機会を減らしている学校が増えている。さらに効率的に、保護者にとっても便利なやり方にしたいと、埼玉県蓮田市立蓮田中央小学校(丸山典雄校長、児童554人)では昨年10月から、集金業務のキャッシュレス化をサポートするエンペイが提供している「koufuri+(コウフリプラス)」というサービスを導入した。こうしたサービスを利用することで、単に口座振替にした場合と比べてどのようなメリットが生まれるのか、同小の工夫を取材した。
口座振替をしようとすると、まず、金融機関に口座振替の登録を行い、請求書を作成。集金した金額を確認し、未納の場合は催促するなどして、銀行に入金をし、最終的には会計と連携させるという一連の流れがあり、事務作業をする上ではかなりの手間が掛かる。コウフリプラスは、そうした一連の口座振替の業務を一元化してサポート。口座振替の登録は保護者のスマートフォンでできるため、口座の登録用紙を配布・回収する必要もなく、全国のほとんどの金融機関に対応しているので、指定の金融機関にわざわざ口座を開設する必要もない。請求額はSNSのLINEと連携して、事前に自動で通知を送ることができ、請求の内訳や過去の履歴も簡単に確認できる。もし残高不足で口座振替ができないときは、コンビニでの支払いにも対応している。
「市内の中学校では最近になって引き落とし先の金融機関を指定した形での口座振替を使うようになったと聞き、調べてみると手数料が安くて、保護者の負担も少なくて済みそうだったが、それでも日常的にその指定された金融機関を使っていない家庭では、このためだけに口座を開設してもらわなければならない。コウフリプラスならばほとんどの金融機関が利用できるので、給与口座など、日常的に使っているものと連携できる。これならば、入金のし忘れといったこともなくなるのではないかと思った」
蓮見宣宏教頭は、コウフリプラスを導入した理由の一つとして、家庭によって異なるあらゆる銀行口座に対応していた点を挙げる。
同小では以前、給食費、PTA会費、教材費を合わせた額を毎月定期的に、封筒に現金を入れて児童が持参。登校後すぐに各教室で当番の保護者が回収し、事務職員が集まった金額を確認するという作業をしていた。コロナ禍の影響もあり、回収作業は保護者から担任の教員に代わったものの、現金で直接集めるという方法に対し、「時代も時代だし、どうにかならないか」という声が上がっていたという。
そこで蓮見教頭らは、さまざまな情報収集をするうちに、エンペイのサービスに着目。すでに同社では保育所などに向けてクレジットカード決済やコンビニ振込をはじめ、「LINE Pay」や「PayPay」といった電子決済サービスに対応した集金業務の自動化サービスを展開していたが、手数料が高いことが難点だった。すると同社から、新たに開発中のコウフリプラスの利用を提案され、この方が手数料を低く抑えられることや、同小のやり方に合っていたことから、昨年10月からテストモデルとして導入することを決めた。蓮見教頭は「PTAの会議で保護者にも説明したが、特に反対や懸念の声などはなく、最初の口座登録の作業も、分からないことがあればエンペイ側でフォローしてもらえるので、こちらで対応することも少なかった」と導入の際もスムーズだったと振り返る。
実際に集金業務がコウフリプラスに切り替わったことで、星野圭司事務主幹は「現金を直接金融機関に何度も持っていくことがなくなった。現金でやっていたころは、午前中は集金業務でつぶれてしまう日もあったし、多いときは200万円を超えるお金を預かっていた。それがデータの確認だけで済むようになった」とメリットを実感する。同小では、社会科見学の費用や業者に直接支払う教材の代金など、現金を児童が持ってくる機会はまだ残っているものの、それまでは1年に10回以上あったのが、多くても4回程度にまで大幅に減ることになるとみている。
これまでは、もし未収があった場合、担任の教員がその家庭に連絡し、後日、遅れた家庭からの現金が次々に事務室に届けられ、また金融機関に預けに行かなければいけないということも日常茶飯事だったという。そうした教職員の細かな業務がなくなったことは、実際の作業時間の削減以上に、心理的な面での負担軽減が大きいようだ。
同小の取り組みは市内の他の小中学校からも注目され、今年度から近隣のいくつかの小学校でも利用が始まっているそうだ。
星野事務主幹は「支払期日に間に合うように今までの集金とは異なるスケジュール計画を立てる必要はあるが、集金サービスの仕組みとしては便利なものだと思う」と話す。