都立校で「オンライン学習デー」スタート 生徒は自宅から参加

都立校で「オンライン学習デー」スタート 生徒は自宅から参加
教員は化学の実験を行いながら、画面越しの生徒に説明していた
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 東京都教育委員会は、都立学校で非常時に教員と児童生徒が双方にオンライン学習を円滑に実施できるよう、オンライン学習の訓練である「オンライン学習デー」を教育課程に位置付け、今年度からスタートさせた。5月2日には都立桜修館中等教育学校(石崎規生校長、生徒939人)で実施され、生徒は自宅から1人1台端末を用いてオンライン授業に参加した。公開された英語の授業では、ブレイクアウトルームに分かれて表現活動のペアワークをしたり、化学の授業では実験を実際にやって見せたりするなど、オンラインを活用したインタラクティブ(双方向的)な授業が展開された。生徒からも「オンラインでも授業内容には何も問題を感じない」と評価する声が上がっていた。

 都教委の担当者は、「新型コロナウイルス感染症は落ち着いても、今後、いつどのような非常事態が起こるか分からない。災害などで一定期間、子供たちが学校に来られなくなった時にもすぐに対応できるよう、平時の訓練が必要だと考えた」と、本年度から「オンライン学習デー」をスタートさせた理由を説明する。

 「オンライン学習デー」は、都立高校(全日制・定時制)、中等教育学校、附属小・中学校、 特別支援学校高等部就業技術科(5校)、中高一貫型聴覚障害特別支援学校(1校)が対象。実施日については、各学校が定める任意の1日としている。全ての授業をオンライン形式で実施し、児童生徒は原則、自宅から参加し、教員は自宅または学校からオンライン形式の授業を配信する。

 この日、中高一貫校の都立桜修館中等教育学校で公開されたのは6年生の英語の授業と、5年生の化学の授業。生徒は持ち帰った1人1台端末を用いて自宅から参加し、教員は学校から授業を配信した。

 「Hello everyone!」。6年生の英語の授業の冒頭、教員が呼び掛けると、生徒たちは画面越しににこやかに手を振る。この日は自分の考えや意見を短くまとめて伝えるペアワークの表現活動などが行われた。教員から与えられたテーマは「来年のゴールデンウィークの過ごし方」。大学受験などが終わり、それぞれが新生活のスタートを切っているであろう来年の今頃、自分はどんなことをしていたいのかを想像し、ブレイクアウトルームに分かれて考えを伝え合う活動を行った。

 5年生の化学では、「気体の状態方程式を活用した気体の特定」についての授業が行われた。教員が気体発生の実験を行い、その様子を同校に常駐しているICT支援員がカメラで撮影しながら、オンライン上で生徒に見せていく。生徒たちはその実験の様子や結果を見た上でデータ処理を行い、各自で導き出した結果や考えについてFormsで回答していった。

 授業を担当した教員は「実験の撮影と配信をサポートしてくれる人がいれば、臨場感のある実験の様子をオンラインで配信することも可能になる」と説明。コロナ禍当初のオンライン授業では、あらかじめ撮影しておいた実験動画を流すといった対応だったというが、「実際にその場で実験をやった方が、より生徒たちにもライブ感が伝わり、学習効果もあると感じている」と話した。

 丸1日、さまざまな科目の授業をオンラインで受けた5年生の脇田真優(まひろ)さんは、「コロナ禍当初のオンライン授業は、先生たちの資料などの見せ方も分かりづらかった。でも、今では画面共有もスムーズになって、オンラインでも授業の内容面で困ったことはない」と感想を話した。

 石崎校長は「最初はほとんどインタラクティブではなかったオンライン授業も、教員の努力や1人1台端末の配備、回線速度の向上、さまざまなソフトの導入などによって、非常に分かりやすいものになってきている」と強調する。「今でも対面での授業に勝るものはないと思っているが、非常時には対面と遜色のない内容の授業がオンラインでも配信できるという安心感はある」と手応えを述べた。

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